2021年ごろに本格的にメタバースの利用が始まって以来、eスポーツやバーチャルYouTuberなどの人気拡大もあいまって、日本国内でもメタバースの開発・運営に参入する企業が増えています。
メタバースというとポリゴンでできた無機質な立体モデルが配置された現実味のない空間というイメージがあるかもしれませんが、近年では実際の場所を正確に再現していてパッと見て本物かどうか分からないクオリティの高いモデルも少なくありません。
そこで今回は現実にある空間をまるごとメタバースで再現した事例を中心に紹介します。
メタバースはどこまで再現できるのか
現在ドバイやマイアミなど世界中の都市がメタバースでの町づくりを行っており、中でもソウルは市税の納付や苦情の申し出などの窓口を設けた公共プラットフォームをメタバースで世界で初めて展開しています。[注1]
これらの「メタバース都市」は多くのビルや建造物が立ち並んでいて、本当に都市の一角をまるごとバーチャル上に移したような臨場感があります。
そのため個人の住宅や店舗はもちろんのこと、空港やショッピングモールといった巨大な施設であってもメタバースでモデルをつくって再現することは可能です。
ただし、そのためには十分な人手や製作期間はもちろんのこと、処理速度に長けた高性能なPCや専門的なソフトウェアなど適切な開発環境を整えないといけません。
過去の記事でメタバースを利用するにはどのような機材が必要になるかまとめていますので、そちらも参考にしてみてください。
メタバースで再現した事例①:名鉄名古屋駅
東海地方の大手私鉄、名古屋鉄道(名鉄)ではメタバースで主要ターミナル駅・名鉄名古屋駅を再現したモデルを制作して期間限定で公開しました。
名鉄では先端技術を活用した取り組みの一環としてメタバースの導入を推し進めており、その検証として今回の名鉄名古屋駅の再現が企画されました。
ただアバターを介して駅構内を疑似的に散策できるだけでなく、随所に設置してある宝箱を見つけて名鉄に関する小話を見たり、電車の行先案内を放送する事務室・通称「DJブース」に入って音声認識機能を使ってアナウンス体験ができたりなど名鉄ファンの興味をそそりそうなコンテンツが搭載されています。
また内部では自由に写真や動画の撮影ができて、普段は入れない駅構内の区域がどのような所か記録できるようにしています。
掲示板のフィルムに蛍光灯の光が反射する様子や停車する車両の運転台など、かなり細かな部分までリアルに作りこまれているので、鉄道ファンでなくても楽しめる仕上がりとなっています。[注2]
メタバースで再現した事例②:首里城
2019年に火災でその大部分が焼失してしまった首里城。再建に向けた取り組みが進められている一方、メタバースでかつての首里城の姿を再現する試みも行われています。
コロナ禍の影響で失った観光地としての沖縄の賑わいを戻すべく、メタバース「バーチャル沖縄」が2021年に発足。
すでにバーチャル空間として国際通りエリアとビーチエリアを公開しており、世界中の方に首里城を疑似的に観光してもらって再建のことを知ってもらうべく首里城エリアを展開しました。
城郭の入口である守礼門から正殿までの一帯を忠実に再現しており、守礼門前には「#つなぐ首里城」という企画でSNSから集められた首里城での思い出や再建へのコメントなどが掲示板に表示されています。
城内には首里城や沖縄の雑学を教えてくれるガイドや沖縄民謡を披露してくれる演奏者などがいるほか、現在の首里城復興の様子をドローン映像で見れたり、沖縄の土産商品をオンラインで購入できたりと様々な機能が備わっています。[注3]
メタバースで再現した事例③:渋谷スクランブル交差点
絶えず人が行き来するスクランブル交差点にビルの壁面に設置された巨大なビジョン広告の数々…、渋谷を代表する光景です。
2019年、この光景を丸ごとメタバースで再現するプロジェクトが立ち上げられました。
これは5Gによる高速通信技術を活かして渋谷の都市経験の新たな可能性を生み出そうと、渋谷区の観光協会が大手通信キャリアと提携して進めたものです。
当初はVRやARによるコンテンツが中心でしたが、コロナ禍で人通りが大幅に減った渋谷の街並みが「自粛の象徴」となったことで家にいても渋谷の雰囲気を味わえる試みとしてメタバースでの街並みの再現が始まりました。
渋谷といえば近年ではハロウィンイベントで混雑する様子も有名になりましたが、メタバース上でも2020年からハロウィンが開催され、累計で100万人以上が参加する大型イベントとなりました。
他にも名探偵コナンとコラボした企画や渋谷にゆかりのあるアーティストによるバーチャルライブなど、若者の集まるまちならではの試みが次々とおこなわれています。[注4]
メタバースは現実世界と仮想空間のいいとこどりができる
メタバースはテレビや雑誌などで特集されることも多くなり、三菱総合研究所の調査によると約83%の方がメタバースという言葉を聞いたことがあると回答しています。
一方でどのようなものか説明できると答えた方は約11%、利用した経験があると答えた方は約5%ほどしかいませんでした。
「何ができるのか分からない」「機材を揃えるハードルがある」といった理由から、利用する気がないという人も少なくないのでしょう。
一方、電通による別の調査でメタバースで行ったことを質問した際、10代や20代ではアバター同士の交流、40代や50代では実際の場所を再現した空間の散策と答えた人が目立ちました。
メタバースは実在する場所にいながら世界中の人との交流など非現実的な体験ができるのが大きな魅力です。
やってみたいけど現実問題として無理なことを行える場としてメタバースを認知すれば、より利用人口は増えるかもしれないですね。[注5][注6]
メタバースなら現実空間を高いクオリティで再現できる
駅に城に街並み…と、メタバースの技術があれば、世界中のどの場所も違和感なく再現できるでしょう。
普段は立ち入れない区域のツアーや、過去の街並みの復元公開など現実世界ではできないことが実現できるのはメタバースの大きなメリットです。
またメタバースはただ忠実に再現するだけでなく、空間上にゲームや動画といった機能を組み合わせることで顧客満足度の高いものを提供できます。
より人を惹きつけるメタバースをつくりあげるには、バーチャル空間の再現度の高さだけでなく価値ある顧客体験につなげることも重要です。
・関連資料のリンク
[注1] メタバース及びブロックチェーン – ソウル市
[注2] バーチャル名鉄名古屋ステーション | 名古屋鉄道
[注3] バーチャルOKINAWA「首里城エリア」公開!! | 沖縄発のメタバース バーチャル沖縄
[注4] 渋谷区公認配信プラットフォーム バーチャル渋谷
・関連資料のダウンロード
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