これ知ってる?印刷にまつわる「おもしろ世界一」

これ知ってる?印刷にまつわる「おもしろ世界一」アート・クリエイティブ

”世界で一番古い印刷物”が実は日本にあるのを知っていますか。

奈良・法隆寺などで所蔵されている経典「百万塔陀羅尼経」は764年に制作された明確に制作年のわかる世界最古の印刷物なんです。[注1]

世界には印刷に関する世界一のものがたくさんあります。

そこで今回は、ちょっとした雑学として印刷の世界記録をいくつか紹介いたします。

おもしろ世界記録その①「世界最長のデジタル写真」

スキージャンプ台の端から端まで覆うように広げられた全長109メートルもの世界最長のデジタル写真。

2020年9月に世界的な光学機器メーカーのドイツ法人とイギリスの写真用品メーカーが印刷したものです。

ドイツ・アルプス山脈周辺に位置するオーベルストドルフにあるスキージャンプ台、シャッテンベルクシャンツェにて雪の降る悪天候の中、60インチの大判プリンターがヘリコプターにより運ばれると、世界記録へのチャレンジが始まりました。

プリンターからはオーベルストドルフの風景や地元の人々、ドイツのウィンタースポーツの歴史など様々なテーマのデジタル写真が次々と印刷されていきます。

無事最後まで印刷して世界記録として認定されたデジタル写真は、のちに部分ごとに切り分けられてオークションに出展されました。[注2]

 

おもしろ世界記録その②「世界最小の本」

虫眼鏡を使わないと何が書いてあるのか見えない、針の穴よりも小さな世界最小の本。

2013年に日本の印刷会社が制作した「マイクロブック『四季の草花』」です。

本の大きさは0.75ミリ四方しかなく、スイカの種の6分の1にも及びません。

目に見えないほど小さいながらも、本を開けると1ページごとにきちんと植物の名前とイラストが掲載されています。

しかも一部のイラストの中には文字が隠れて入っていて、デザインへのこだわりも感じられます。

このマイクロブックは現在、印刷した会社の企業博物館に展示されていて、かつてはルーペとセットで購入することもできました。

制作した印刷会社では1964年から極小サイズの本の印刷をおこなっており、過去に2度も世界最小の本の制作に成功しています。

一度ロシアのアーティストにより世界記録を抜かされたものの、このマイクロブックにより再び世界記録を取り戻すことができました。[注3]

 

おもしろ世界記録その③「世界最大の木版画」

印刷にまつわる世界記録には、日本の伝統的な印刷作品である木版画に関するものもあります。

2014年11月、約400平方メートルにもおよぶ世界最大の木版画「COSMO-242」が広島の版画家により制作されました。

下書きを書かずに一気に図柄を彫り上げる手法を用いて、4年以上の製作期間の末完成したこの作品は長さが約220メートルもあり、世界最長の木版画としても世界記録に登録されています。

「COSMO-242」は大量の版木を並べると1枚の作品になるユニークな構造になっていて、版木を正方形状に並べると平和や吉兆のシンボルである鳳凰や龍が現れ、横一列に並べると生命をテーマにした物語を見ることができます。

一つ一つの版木の裏にはたくさんの人々の平和や震災からの復興に対するメッセージが寄せられていて、「愛と平和」を広島から呼びかける作品に仕上がっています。[注4]

 

おもしろ世界記録その④「世界最大の活版印刷機」

2019年4月、イングランド北部にて縦157.5センチ×横106.5センチもの巨大なポスターが掲載されました。

現地のデザイン事務所などが手掛けた地元のアイデンティティを探求するプロジェクト「These Northern Types」の一環として、世界最大の活版印刷機「PeoplePoweredPress」を使って作られたものです。

この活版印刷機は一度に縦145.0センチ×横94.1センチもの範囲に印刷することができます。

機械は手動式で、固形鋼で作られた存在感のある活字を並べて、二人がかりで1トン近くある金属製の棒を動かして紙に圧力をかけることで印刷します。

このポスター用の活字をつくるため、Graftというオリジナルのフォントが開発されています。

Graftの活字は英字のものが720pt(約24cm)ほどの長さ、ローマ数字のものはなんと3480pt(約122cm)ほどもあります。 [注5]

 

印刷の世界一には日本発のものも多い

今回紹介した4つの世界記録のほかにも、印刷に関する世界記録には「再生紙を利用して作られた世界一古い本」や「世界一大きなコミック本」など記事に載せきれなかったものも数多くあります。

改めてみると、今回紹介したものには日本人による世界記録が意外と多いことがわかりました。

日本の印刷文化の奥深さみたいなものを意図しない形で実感したような気がします。

今後も不定期で印刷のちょっと気になるトリビアを発信していきたいと思います。

 

・関連資料のリンク

[注1] 玉川大学教育博物館:『百萬塔』と世界最古の印刷物『陀羅尼』
[注2] Guinness World Records “Longest digitally printed photograph”
[注3] Guinness World Records “Smallest book published”
[注4] Guinness World Records “Longest woodblock print”
[注5] Guinness World Records “Largest letterpress printing machine”

 

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