「メタバース」という言葉、ニュースや広告などで一度は目にしたことがあるかと思います。
メタバースとはプレイヤーがアバターを介して自由に行動できる仮想空間。コロナで大規模なイベントができなくなったこともあり、近年、メタバースは頻繁に利用されるようになりました。
メタバースはオンライン公演やネットゲームなどエンターテイメントで使われるイメージが強そうですが、実は金融業界でも導入が進められています。
そこで今回は、銀行や生命保険のメタバースを使ったマーケティングについて紹介します。
メタバースに金融サービスが参入した経緯
メタバースの世界に金融サービスが初めて登場したのは、今のメタバースのはしりともいえる「セカンドライフ」というサービスが世界的に流行した2007年ごろです。
セカンドライフにはリンデンドルという仮想通貨があり、サービス内で自由に使用できます。
リンデンドルは米国ドルと両替できて、為替レートに合わせて取引すれば差益を狙うこともできます。
セカンドライフのユーザーが増えていくと、リンデンドルを取り扱う金融サービスも登場します。
しかして、2009年にリーマンショックが起こると、そのほとんどが不景気の影響を受けて撤退しました。
現在のメタバースはセカンドライフよりユーザー数が多く、2026年には世界人口の4分の1が日常的にメタバースを利用するといわれています。[注1]
こうした市場規模の将来性から、現在では様々な金融サービスがメタバースへの参入を目指しています。
銀行がメタバースを活用している事例
メタバース活用事例:みずほ銀行
大手銀行でもいち早くメタバースに着目しているのが、みずほ銀行です。
みずほ銀行では「MIZUHO次世代金融推進プロジェクト」を推進していて、CX向上や業務の効率化などのために社内全体でアイディアを募って実施しています。
その一環として、みずほ銀行は2022年、世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット」に出展しました。
メタバース内には実際の店舗を模したブースが設置され、1階の交流スペースでは金融セミナーや相談会も開催しています。
2階の塔になっている部分ではボルダリングのバーチャル体験ができて、途中で出される金融に関するクイズに正解すれば景品をもらえます。
同社ではほかにもブロックチェーンのプラットフォーム開発など、デジタル技術を生かした金融システムの構築を目指しています。[注2]
メタバース活用事例:東京スター銀行
東京スター銀行は2022年4月に都市型バーチャルモール「TUG MALL」にVRラウンジを出店しました。
TUG MALLは実際に街歩きをしている感覚で買い物が楽しめるメタバースです。
雑貨店や飲食店などが立ち並ぶ中、東京スター銀行は金融機関としては唯一出店しています。
店内では相談窓口やATM機能などが直観的に使えるため、電子機器の操作が苦手な人でも無理なく利用できるようになっています。
会員サイトにログインすれば、そのままオンラインバンクに接続できるようになっていて、メタバースから直接お金の振り込みなどができるのも特徴です。
さらに過去には店内で5つアイテムを集めて、アンケートに答えると抽選でギフト券があたるキャンペーンを行うなど、VRラウンジそのものを楽しむ仕掛けも盛り込まれています。
生命保険がメタバースを活用する事例
メタバース活用事例:日本生命
日本生命では2022年の春、職域での保険営業にメタバースを活用できないか実証実験を行いました。
実験では、まず客先の食堂前にタブレット端末を設置してもらいます。
端末の画面にはバーチャル保険販売員「花ちゃん」が表示され、誰かが通り過ぎると「こんにちは」というように挨拶をします。
そこから保険についての質問や相談を聞き出して、実際の営業スタッフがアバターを通じて返答するというものです。
まだ本格的な保険営業への導入までは至ってないものの、目新しさから集客効果は高いといえます。
メタバース活用事例:明治安田生命
明治安田生命では契約した顧客の離脱を防ぐため、メタバースの導入を進めています。
同社では、2019年度より顧客の健康維持に向けた活動を支援する「みんなの健活プロジェクト」を実施しています。
その一環として、メタバース上で健康に関する知識を遊びながら学べる〇×クイズなどのコンテンツを手がけています。
また同社は新たなデジタルコンテンツとして「明治安田生命バーチャルスタジアム」を設置していて、タイトルパートナー契約を結んでいるJ1リーグの試合のオンライン観戦や、人気芸人のトークライブなど様々なイベントを開催しています。
他にも社内では、避難訓練や新人社員の内定式などにVR技術が使われているなど、同社は保険業界内でもいち早くVRやメタバースを取り入れています。[注3]
海外ではこのような活用事例も…。
ラトビアのベンチャー企業・ZELFは、世界で初めてのメタバース上の銀行「ZELF bank」を開設しました。
ZELF bankではDiscordなどのSMSアプリにて取引を行うため、カード発行や公式アプリのダウンロード不要で利用できます。
さらにメタバース内での仮想通貨と実際の貨幣の両替もできるため、「ゲーム内のアイテムを集めて実際のお金に換えてもらう」ことも可能です。
またシンガポールの大手銀行・DBSは、メタバースの「The Sandbox」と提携して「DBS BetterWorld」を開設しました。
カーボンニュートラルを目指す同国の企業として、DBS BetterWorldにあるアイテムや土地などはカーボンオフセットに対応したものとなっています。
顧客の関心を引き寄せるのにメタバースは効果的!
今、金融業界ではメタバースなどを使ったマーケティングやナーチャリングが注目されてきています。
コロナ禍で顧客と自由に接触できなくなったからこそ生まれた、新しいマーケティングのスタイルといえるでしょう。
しかしまだメタバースが世の中に広まるのはこれから、今後もユーザーの増加にあわせてあらゆる金融機関がメタバースに参入してきそうですね。
・関連資料のリンク
[注1] Gartner | “25% of People Will Spend At Least One Hour Per Day in the Metaverse by 2026”
[注2] みずほ銀行「メタバースビジネスに向けた<みずほ>の取り組みについて」
[注3] 明治安田生命「メタバース(仮想空間)上に「明治安田生命バーチャルスタジアム」を登場!」
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