今年、国連世界観光機関(UNWTO)や観光庁などにより、自然環境への負担をおさえながら観光産業の成長を目指す「グリーンな観光」が提唱されています。
このように世界全体のあらゆる業界で持続可能性への配慮が見られるようになりました。
印刷業界でもサステナビリティ遵守の観点から、違法伐採による森林資源の減少や工場から排出される化学物質による環境汚染を食い止めるための取り組みが行われています。
今回は環境に配慮した業者を評価する「グリーン購入法」のことから、印刷発注をかける際にどんな点に気を付けるべきか解説します。
環境に優しい企業を国が認定する「グリーン購入法」
グリーン購入法(正式名称:「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」)は、消費者が環境的・社会的サステナビリティに配慮している企業の製品やサービスを購入する「グリーン購入」を促進させる目的で2000年5月に当時の環境庁により施行されました。
このグリーン購入の考え方をまとめたものが以下の「グリーン購入基本原則」です。
- 「必要性の考慮」
事前に本当に購入すべきものか検討して、無駄な消費を減らす
- 「製品・サービスのライフサイクルの考慮」
再生可能な材料の利用や、リサイクルのしやすさなどを考慮して製造されている
- 「事業者との取り組みの考慮」
企業や団体が環境・社会の保全を意識した取り組みを積極的に行っている
- 「情報の入手・活用」
企業や商品に関して環境に対する情報を調べて購入時の基準にする
グリーン購入法では政府や独立行政法人が物品を調達する際、環境負荷の低減のために重点的に選択すべき品目である「特定調達品目」を選ぶよう義務付けられていて、地方自治体でも努力義務とされています。
「特定調達品目」の種類は事務用品や電子機器などの計22分野285品目で、それぞれの品目ごとに定められた認定基準をクリアすればグリーン購入法適合品として認められます。
例えば文房具の場合は「主要材料にプラスチックが含まれているものの場合、プラスチック重量の4割以上を再生プラスチック由来のものが占めている」ことなどが基準として挙げられています。
印刷業界におけるグリーン購入の基準「GP認証制度」
2001年、一般社団法人 日本印刷産業連合会日本印刷産業連合会が印刷業界独自の環境基準として「印刷サービスグリーン基準」を設定しました。
この基準は2023年5月現在、商業印刷の主な印刷技法であるオフセット印刷、シール印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷にそれぞれ設けられており、例えばオフセット印刷では以下のような基準が取り決められています。
【主な基準項目】
① 資材 | ・印刷用紙… 「古紙や森林認証材などのパルプの配合率が最低20%以上である」など。 ・印刷インキ… 「環境的に有害なVOCの発生を抑制している」など。 ・表面加工・製本材料… 「古紙リサイクルを阻害する要因が改善されている」など。 |
② 工程 | ・デザイン… 「作業の80%以上がデジタル化されている」など。 ・製版… 「印刷後のアルミ刷版を100%リサイクルしている」など。 ・印刷・加工… 「VOCを含む廃液が発生していない」など。 ・梱包・運搬… 「運搬用車両の50%以上が低公害車である」など。 |
③ 事業者の取り組み | 「持続可能性に即した目標を社内で掲げている」など。 |
上記の他にも印刷サービスグリーン基準の項目は、具体的な数値を明記しながら細かく設定されています。
第三者からなる認定委員会による客観的な審査に合格し、基準を満たしていると認められた印刷会社には「グリーンプリンティング認定(GP認定)」が授与されます。
地域の環境保全や労働環境の整備に関する項目もあるため、GP認定を受けた印刷会社は周辺住民や働く人のことも考えている印刷会社といえます。
GP認定は環境に配慮された印刷工場を認定する「GP工場認定制度」、環境に配慮された資機材を認定する「GP資機材認定制度」、環境に配慮されて製造された印刷物を認定する「GP製品認定制度」の三つの制度から成り立っています。
認定を得られたら下記のGPマークを使用できるようになります。
現在、多くの行政機関や公的機関が印刷の発注先を選ぶ条件に、GP認証を取得済であることを定めています。
GP認証は「自然や社会に優しい印刷会社だと国が認めた印」といえますね。
環境にやさしい印刷会社の具体的な取り組み事例
本当に環境にやさしい印刷会社はどのような取り組みをしているのか詳しく知りたいという方のために、いくつか事例をまとめました。
FSCⓇ森林認証材を採用している
FSCⓇ森林認証材は違法伐採や児童労働などが排除された適切に管理されている森林資源由来の木材です。
FSCⓇ森林認証材から作られた印刷用紙を採用することで、環境的・社会的なサステナビリティを考慮した印刷事業が行えます。
有害物質の出ないインキを使っている
従来の印刷インキにはVOCという化学物質が含まれており、大気中に蒸発すれば光化学スモッグや酸性雨の原因となってしまいます。
印刷業界ではVOCの発生を抑えられる「バイオマスインキ」や「ノンVOCインキ」の利用も広がっています。
湿し水を使わない技法を採用している
オフセット印刷では刷版の印刷部分の境目がはっきり出るよう、湿し水と呼ばれる液体が使われます。
しかし湿し水は化学的な薬品が含まれているため、近年では湿し水を使わない印刷技術である「水なし印刷」を採用している会社が増えています。
カーボンオフセットを導入している
カーボンオフセットはクレジットと呼ばれるCO2排出権を購入することで植林運動などCO2削減のための活動を支援して、業務上どうしても発生してしまうCO2を埋め合わせするという制度です。
少部数オンデマンド印刷を推奨している
大量印刷で発注より多く印刷物がつくられればその分、廃棄処分される量も多くなります。
少部数オンデマンド印刷により必要な分だけ発注できれば余剰分が生まれにくく、産業廃棄物の削減や工場で消費されるエネルギーの節約などにつながります。
「GP認定」は環境にやさしい印刷会社であるあかし
森林伐採や大気汚染など印刷業界全体で取り組むべき環境問題は数多くあります。
自然環境への影響を減らす取り組みを行っている印刷会社である証明となるのが「グリーンプリンティング認定(GP認定)」です。
印刷工場や印刷資機材などで環境保護や持続可能性向上などに対する取り組みを行っていると認められれば、GP認定を取得できてGPマークの利用が認められるようになります。
印刷の発注先を選ぶ際には、このGPマークを取得しているかどうかを見てみるのもおすすめです。
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