脱炭素化の新たなトレンド、インターナルカーボンプライシング

脱炭素化の新たなトレンド、インターナルカーボンプライシングプロモーション

2050年のカーボンニュートラル実現に加え、SDGsの実現に向けた取り組みも加わり、企業の脱炭素化の動きが多く見られるようになりました。

近年では、国内外の大企業には「インターナルカーボンプライシング」という制度を導入するところも増えてきています。

今回はこのインターナルカーボンプライシングがどのようなものなのか、紹介いたします。

インターナルカーボンプライシングは企業による「炭素価格」

インターナルカーボンプライシングは企業が脱炭素化や環境保護のための投資を促進させるために、二酸化炭素の排出量を価格化した「炭素価格」を社内で独自に設定する制度です。

一般的なカーボンプライシングは、国や民間団体が企業から二酸化炭素の排出量に応じた額の税金や排出権料金(クレジット)を徴収します。

例えば、ある化学メーカーが自社の工場から大量の二酸化炭素を排出していたとします。

この際、外部では関連団体からクレジットを購入してカーボンオフセットを行うことでカーボンプライシングが行われます。

これとは別にメーカーは、脱炭素化を進めるための資金調達のプランを考えたり、脱炭素化の事業に関連する入札先や投資先を決定したりする取り組みがインターナルカーボンプライシングにあてはまります。

インターナルカーボンプライシングは基本的には企業の内部だけで行われるものです。

したがって、炭素価格は実際に温室効果ガスの排出を軽減できる可能性や、世間での脱炭素化の動向などを考慮して適宜調節することもできます。

時期的に排出量の削減が難しいときは炭素価格を低めに設定しなおし、別の時期になったら価格を再設定するというような形で、インターナルカーボンプライシングにより無理のない脱炭素化を促進させることもできます。

 

世界中で導入している企業の数が増えている

インターナルカーボンプライシングができるきっかけが生まれたのは、京都議定書が採択されて世界中で環境問題の対策が本格的に行われるようになった1998年。

イギリスの石油会社・BP社は、全体的な温室効果ガスの排出量削減を目指すために事業部門同士で排出権を取引できるようにした制度を導入し、3年間で同社全体が出していた排出量の10%を削減することに成功しています。

その後2015年にパリ協定が採択されてからインターナルカーボンプライシングを導入する企業が増え始め、2020年の時点で制度を取り入れている、あるいは制度を取り入れる予定の企業の数は世界中で2,000社を超えています。

このうち日本の企業の数は250社にものぼっており、アメリカについで世界で二番目の多さを誇っています。

国内で導入している企業によって実際の1tあたりの炭素価格は大きく異なり、1,000円から10万円まで各社でかなりばらつきが見られます。

 

インターナルカーボンプライシングの3つの方法

インターナルカーボンプライシングには「シャドープライス」、「インプリシットプライス」、「内部炭素課金」という3つの種類があり、それぞれ内容や目的が異なります。

方法その1:「シャドープライス」

シャドープライスは外国の炭素税や炭素排出権の取引価格など、すでにある外部の炭素価格が今後どのように推移するか予想して、仮想上の炭素価格を割り出す方法です。

将来の価格変動を考慮して炭素価格を仮定することで、今後もし脱炭素化のための規制が強化された場合の対策を考える上で参考にすることができます。

またシャドープライスによって割り出された炭素価格は、CO2削減コストと比較して脱炭素投資を行うかどうか決定する基準にもなります。

 

方法その2:「インプリシットプライス」

インプリシットプライスは「暗示的価格」とも呼ばれ、自社の過去実績や他社の事例を参考にしたり数理的な分析を行ったりすることで、炭素価格を割り出す方法です。

社内外の現状を踏まえたうえで炭素価格を導き出すため、脱炭素化に向けて何をどう取り組むべきかプランニングする上で役立てられます。

さらにインプリシットプライスで割り出された炭素価格は、将来的に回収可能な見なし利益とすることで脱炭素投資の促進にもつなげられます。

 

方法その3:「内部炭素課金の導入」

各部門や各部署から、二酸化炭素の排出量に応じて直接金銭を徴収するのが内部炭素課金の仕組みです。

徴収された分の金額はカーボンクレジットの購入や省エネ性の高い設備の導入など、脱炭素化につながる取り組みの費用に充てられます。

 

インターナルカーボンプライシングのメリット

① 脱炭素化のビジョンを共有できる

インターナルカーボンプライシングを導入することで、脱炭素化に関して会社の目標やビジョンを社内全体で共有しやすくなります。

また具体的な炭素価格を設けることで、脱炭素化を行う上で問題点の分析や取り組みの策定につなげられます。

経済的な負担も考慮されるため、各部門の実益をそこなわずに脱炭素化に取り組める社風を共有しやすくなります。

 

② 将来的な規制強化に対処できる

将来温室効果ガスに対する規制が強化された場合、事前に脱炭素化を進めていれば企業として規制を破ってしまうリスクをおさえることができます。

2012年に日本でも炭素税が導入されているものの欧米諸国と比べるとその税率は低く、2050年のカーボンニュートラル実現に向けてより規制が厳しくなる可能性は十分ありえます。

インターナルカーボンプライシングにより脱炭素化が進めば、日本だけでなく欧米諸国での規制強化のリスクにも対処できるようになります。

 

③ 投資家への環境施策のアピールにつながる

環境問題への関心が高まるとともに、投資家たちも投資先を選ぶ基準として環境問題の解決に取り組む姿勢を見るようになりました。

しかしたとえ脱炭素化を社内ビジョンに掲げていても、いつまでにどのくらい削減する予定か目標がないと、具体性が乏しく投資家からの信頼は得られません。

インターナルカーボンプライシングを導入することで、会社が脱炭素化に本当に取り組む姿を投資家に見せて脱炭素投資を促進させることができます。

 

脱炭素化にはインターナルカーボンプライシングが活用できる

近年、インターナルカーボンプライシングを導入することで炭素価格を制定する企業が国内外で増えています。

1トンあたりの二酸化炭素排出量を価格化した炭素価格は企業で独自で設定できるため、脱炭素化がどれぐらい可能なのか、あるいは他社がどれぐらい脱炭素化を行っているかなど様々なものごとを参考に価格を設定することができます。

また今回紹介したインターナルカーボンプライシングの方法だけでなく、脱炭素化の取り組みとしてカーボンオフセットの購入を行っている企業も増えています。

 

・関連資料のダウンロード

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