今年は大阪万博が開かれる年ですが、見本市や展示会や交流展といった企業が数多く出展するイベントの場でも近年はDXが進んでいます。
かつては会場に実際に行って、実際の展示物をながめたり紙媒体の名刺や会社の資料を交換したりとアナログでリアルな体験の場としての側面が強かったイベント。
ですがDXによりアナログとデジタルを組み合わせたクロスメディアでのマーケティングがイベントの場でも導入されてきています。
今回はイベントDXについてメリットや成功事例もふまえながら説明します。
イベントDXの概要と具体的な施策例
イベントDXとは見本市や産業交流展などのリアルイベントの企画、運営、出展においてデジタル技術力やバーチャルコンテンツを活用して、業務の効率化やブランド知名度の向上などにつなげる試みを指します。
コロナの流行により一時期大幅に減ったリアルイベントの集客力を回復する狙いやAI技術などの急速な発展の影響から、イベントの運営業務もDXを促進する試みが見られるようになりました。
イベントDXの施策の内容は、主催する側か出展する側かによって異なります。
主催者側の施策の例としては、スマホで利用できるデジタルチケットの発行、チャットボット機能を活かした会場案内、講演などのライブ配信といったものが挙げられます。
出展者側の施策の例としては、QRコードなどを用いたWEBコンテンツへの誘導、他社から頂いた名刺のデジタル化、当日参加できなかった方向けのバーチャル展示などが挙げられます。
ここからは、出展者側から見たイベントDXの施策のメリットや流れを詳しく見ていきます。
イベントDXの施策を行う4つのメリット
① 参加者のデータを分析できるようになる
展示ブースでコンテンツや資料をダウンロードできるようにすることで、DL用ページにアクセスしてくれた参加者のアクセスデータを取得して分析できるようになります。
展示ブースに来てくれた参加者の年代・性別・国籍などのデータが分かるようになるため、展示内容に関する物品のマーケティングに役立てられます。
また展示内容に関してより細かく分析したい場合は、参加者の視線の動きをアイトラッキングで解析したのち、来てくれた方がどこに関心を持ってくれたか調べるという方法も有効です。
② パーソナライズしたアプローチがしやすい
AI技術の活用などにより、参加者のアンケート回答に応じて一番興味や関心のありそうな展示内容の情報を適宜提供してアプローチをはかることも可能です。
複数の企業や団体と共同で出展している場合、関心のある分野から次に見る企業ブースを提案してもらうといった使い方もできるでしょう。
また外国から見に来てくれた人にも、AIにより英語や中国語などその人が話す言語をリアルタイムで翻訳することで臨機応変に対応できるようになります。
③ Webとの連携で参加者やリードを集めやすくなる
展示内容の一部や過去の展示内容をオウンドメディアや公式サイトなどで公開することで、当日イベントに来てくれるよう促すことができます。
当日イベントに参加できなかった人にむけて展示内容をWeb動画やDL資料などのかたちでWeb上で公開して提供すれば、現地で取得できなかったリードの情報も集めやすくなります。
また事前に展示ブースのデジタルツインを生成しておけば参加者の目から自社の展示がどう映るのかバーチャル上で確認できて、より目を引きやすい展示レイアウトの参考になるでしょう。
④ 参加者とのコミュニケーションを促進できる
QRコードを通じてWebコンテンツにアクセスする導線を用意して、フィードバックやアンケートを書いてもらうなど参加者とのコミュニケーションを促すことができます。
またミニクイズや人気投票などのゲーム性のあるコンテンツを提供すれば、参加者を集めて会社を知ってもらうきっかけを作れるかもしれません。
XやLINEなどのSNSで公式アカウントを運用していれば、イベントや会社名のハッシュタグがついた投稿をチェックしながら、展示内容や参加者のアプローチをより注目しやすい形に調整することもできるでしょう。
イベントDXに関する5つのステップ
見本市や交流展などのイベントに参加する際、どうデジタル化を進めるのか開催前後の事務もふくめて解説いたします。
① イベント出展の現状の課題を把握する
イベントのDXを進める大きな目的として、参加者と効率よくコミュニケーションを行いコストや手間をおさえてエンゲージメントを向上させることがあります。
今まで出展してきたイベントをフィードバックして、思った以上に無駄なコストがかかったところや、参加者とのつながりを深められなかった理由をしっかり分析してみましょう。
ある程度の改善点が見えてきたら、次のイベントに出展する際にはどうしたらいいかKPIを決めるうえで参考になるはずです。
② イベントDXの取り組み案を考える
過去の出展での改善点などをもとに、参加告知や展示内容やアフターフォローなどどの部分に何を取り入れてDXを進めたらいいか、施策案を考えましょう。
その際もターゲットのペルソナやカスタマージャーニーを考慮することで、より参加者の関心にささりやすい内容を展示できるようになります。
イベントDXは大人数で行うことが多いため、施策案の方向性や目標が定まったらしっかり共有して一体的に準備を進められるようにしておきましょう。
③ イベント当日に向けて準備を進める
イベント当日に向けてスケジュールを立てて、オウンドメディアでの告知や展示物の制作を計画的に進めていきます。
特にデジタルコンテンツの展示物を新規で制作する場合、制作スタッフや制作期間を十分に確保しておかないと完成が間に合わないリスクが高くなります。
大事なのは今できる範囲を超えないよう、イベントDXの準備を無理なく進めること。
準備していて何か行き詰ったことがあれば、一度ChatGPTなどの生成AIサービスに相談して具体的なアドバイスをもらってみるのも手ですよ。
④ イベント開催中はトラブルに気を付ける
イベント当日、受付スタッフとして展示ブースにいる間は、DXを進めたことが無駄にならないようトラブルの発生を最小限におさえることが重要です。
参加者が操作できるコンテンツにバグやエラーが残っていないか、ライブ配信などが遅延なく行えるような通信環境が整っているか不安に感じたことは前もってチェックしておきましょう。
⑤ イベント後のフォローアップを実施する
イベントが終了したあとは、アドレス情報が取得できた参加者に対してお礼のメールを送るなどのフォローアップを必ず実施しましょう。
その後も自社が参加するイベント情報の告知や会社のサービス内容に関するメールマガジンなどを配信して、自社とのつながりを途切れさせないようにします。
当日来てくれた参加者を一人でもリードにさせるためには、長期間にわたって参加者とのコミュニケーションを取り続けるのが重要です。
DXを専門的に取り扱っているイベントの例
在では色々な企業や団体のDXの取り組みを専門的に展示しているイベントも増えています。主な例を2つ紹介していきます。
① 「DX総合EXPO」
DX総合EXPOは東京と大阪で毎年2回、営業や経理など企業活動におけるあらゆるジャンルにおけるDXの推進を目指して開催されている、日本最大級のDXの総合交流展です。
人事労務・経理・法務・営業など部門ごとの交流展で構成されていて、各会社が生成AIやSaaSツールなどの様々な製品を展示しています。
大手企業の幹部や著名人による講演も行われており、ビジネスのヒントを得られる場であるのも特徴的です。
② 「ジャパンモビリティショー」
2023年から毎年開催されているジャパンモビリティショーは、かつて開催されていた日本最大の自動車産業の見本市である東京モーターショーの後継イベントです。
SDVと呼ばれる車両を制御するソフトウェアを自動更新できる機能を持った自動車や、道路の定期点検をデジタル化するシステムなど「モビリティDX」を実現する最新技術が数多く展示されています。
イベントDXは「目標」を立てて動くことが大事
コロナ禍以降、開催が多くなったリアルイベントでは近年、生成AIなどの最新技術を取り入れたイベントDXを実施する例が多く見られています。
イベントの告知や参加者とのコミュニケーションなど様々なところでDXが図れるため、過去出展したときの課題からどこをデジタル化すべきか考えて「DXの目標」を立てておくのがおすすめです。
目標をもとにDXの施策案がまとまったら、イベント当日に向けてスケジュールを立てて計画的に準備を進めておきましょう。
イベント当日や開催後はDXによる効果が得られるよう、参加者とコミュニケーションをしっかり行いながらエンゲージメントの向上をねらいましょう。