自費出版の新たなかたちとして「ZINE」というものがひそかなブームとなっています。
雑誌を意味する「マガジン」が語源のZINEは、作者が好きなことや見せたいものを自由に発信できる同人誌やフリーペーパーとも違う新たな自費出版のかたちといえます。
東京や大阪などに専門の書店がオープンしたり、コミックマーケットのような大規模な即売会が開催されたりなど、近年ではZINEの人気の高まりが目に見える形で表れています。
今回はZINEがどういうもので、自費出版でZINEを制作するメリットとしてどういうことがあるのか解説いたします。
ZINEとは自由な内容で発信できるメディアの新たなかたち
ZINEの大きな特徴として利益目的ではなく、意見や調査結果や作品など好きなことを自由に表現するために発行することがあげられます。
また商業出版の場合は、原稿制作から流通・小売にいたるまでそれぞれの工程が分業化されていますが、ZINEは自費出版なので基本的には作者がほぼ全てを担当します。
ZINEはプロアマ問わず誰でも自由につくれる点からよく同人誌と混同されやすく、国内では両者の違いがはっきりと定義されてはいません。
同人誌のようなアニメやゲームなどの二次創作の内容のものはZINEではほとんどみられないので、この点は両者の明確な違いといえるでしょう。
手頃に制作して配布できる点から、ZINEは個人だけでなく企業や自治体でもつくられる例が見られます。
ZINEをつくることの主な5つのメリット
メリット①:自分の思い通りに表現できる
ZINEの魅力は何より自由に好きなことを好きな形で表現できることです。
どんなにニッチな内容で一握りの人にしか刺さらないようなものや、スポンサーや出版社の意向を除いて制限なく表現できるため、サブカルから政治まであらゆるジャンルのものが制作できます。
メリット②:同じカテゴリーの人同士の交流を促す
ZINEは自分と同じ趣味や主義主張の方に向けてだけでなく、同じ世代、同じ出身地、同じ職業など様々なカテゴリーの人に向けて情報を発信できるメディアです。
ZINEを通して自分と同じカテゴリーの人同士でのネットワークを形成することもできます。
メリット③:新たな文化や流行の発展につながる
アメリカでは音楽や映画などのサブカルチャーの普及や発展にZINEが大きな役割を果たしたことが多く見られます。
商業性が無いからこそZINEは作る側は本当に薦めたいものを紹介できて、読む側にはマイナーなアーティストや作品を見つけ出せる役割があります。
メリット④:アート作品としての価値も持たせられる
ZINEではデザインやレイアウトを自由に構成できるため、作者のセンスに任せて美術性の高い冊子をつくることができます。
ZINEのテーマにあわせて見た目のインパクトや独自性を出すことで、より世界に一冊しかないZINEとしての個性を際立たせられます。
メリット⑤:ブランディングの手段として活かせる
ZINEを商品やコンテンツをアピールするためのツールとして頒布することで、ブランディングに役立てることもできます。
近年ではアーティストが自らのZINEを手がけてイベントなどで配布する事例も多く見られています。
ZINEの作り方を7つのステップで説明
ZINEの制作はたくさんの作業工程から成り立っているため、無理のないスケジュールを立てて計画的に準備を進めることが重要です。
内容やボリュームにもよりますが、フルタイムでずっと作業に携われるという場合でもない限り数ヶ月単位のロングスパンで制作するのがおすすめです。
病気やけがなど作業を中断せざるを得ない場合や途中で内容を大幅に修正したい場合でも、時間に余裕のあるスケジュールなら柔軟な対応がしやすくなります。
① ZINEのメインテーマを決める
自分がどんなことをどういう形で発表したいのかを考えて、ZINEのメインテーマを決定します。
商業目的で出すものではないため読まれるかどうかよりも、自分が書きたいかどうかを重視して考えても全然問題はありません。
その上でエッセイ本・雑誌・写真集など、どんな形式でZINEを作るか決めましょう。
② ZINEの基本構成を決める
メインテーマが決まったら、そのテーマに関してどんな内容を掲載したいかより深堀りしていきます。
最初から最後まで同じ内容で通すのも良いですし、様々なサブテーマの内容をオムニバス形式でまとめてみるのも良いでしょう。
また複数名でZINEを共同制作する場合、本格的に制作作業に移る前に原稿の書き方やレイアウトなどをルール化しておくとよいですよ。
③ ZINEの原稿内容を準備する
書きたい内容が具体的に決まったら、文章・写真・イラストといった原稿に入れる要素を準備していきます。
文章を制作するときは最初から整っている文章を書こうとすると、うまい言い回しが思い浮かばず作業が滞ってしまうこともあります。
こういう時は書きたい内容に関して、思いついたことをメモや箇条書きでどんどん書き留めておくと作業がやりやすくなるかもしれません。
また原稿に載せる写真を用意する際、カメラの画面では問題なく見えてもPC画面で見るとブレてたり暗すぎたりすることもあるかと思います。
なるべく多めの枚数で撮影しておけば、それだけどの画像を掲載すべきか選びやすくなり、撮り直しにいくといった手間も防げます。
④ ZINEの出版構成を決める
原稿ができたら、用紙のサイズや印刷時の色設定(モノクロかカラーかどうか)など出版する際の構成を早めに決めておきましょう。
ZINEはA4・A5・B5のサイズのものが一般的ですが、内容によっては文庫本サイズのA6や漫画の単行本サイズのB6のものもあります。
⑤ ZINEのページレイアウトを決める
文章や画像など原稿に載せたい内容が準備できたら、どのように掲載するかページのレイアウトを決めていきます。
IllustlatorやCLIP STUDIOといった原稿制作ソフトがあれば直観的に操作できるため、デザイン制作の負担も減らせやすいです。
ネットで検索してみると無料の制作ツールもあったりするので、いろいろ調べてみて実際に導入するかどうか決めてもよいでしょう。
⑥ ZINEの印刷用原稿を準備する
ZINEの原稿データができあがったら、修正すべき箇所はないか一通りセルフチェックをしておきましょう。
内容に問題がなければ原稿データを印刷するにあたり、原稿ファイルの拡張子、ページ番号など印刷所の規定にあわせて設定します。
⑦ ZINEを印刷・製本する
ここまでの制作作業は作者だけでおこなえますが、ZINEの印刷・製本は専門業者に発注してやってもらう必要があります。
ある程度のページがあるものを頒布・販売したい数だけ印刷するとなると、家庭用コピー機ではかなり効率が悪くなってしまいます。
プロに任せることでミスの心配がなくなるだけでなく、冊子にしたときの仕上がりもよりきれいになりますよ。
特に近年では印刷機材の性能向上により、細かな模様や鮮やかな色彩もくっきり表現してより原稿に近づけた仕上がりで印刷できる業者も増えています。
少部数の発注なら費用もおさえやすいので、まずはどんな業者があるかいろいろ探してみてください。
ZINEは自分の想いやセンスを気軽に表現できるメディアの姿
ZINEは商業目的ではなく、自分の好きなことを好きなかたちで発表する目的で作られる冊子です。
あるコミュニティや愛好家達の交流の場として数多くのZINEが欧米でつくられ、21世紀にはいると日本でも同人誌とは違う自費出版の形として定着され始めています。
様々なメリットがあることから、国内では個人で出しているもの以外にも企業や地方自治体が新たなブランディングツールとして発行しているZINEも少なくありません。
ZINEをちょっと作ってみようかなと興味を持たれた方は、どんなものが実際に作られているのか調べながら色々アイディアを考えてみるのもよさそうですね。
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