「アニュアルレポート」「CSR報告書」「統合報告書」…どう違う?

「アニュアルレポート」「CSR報告書」「統合報告書」…どう違う?SDGs

企業がステークホルダー(投資家や従業員などの企業関係者)向けに開示する報告書には、様々な種類があります。

アニュアルレポートやCSR報告書、統合報告書といった名前を一度は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

今回は急に企業の報告書の制作担当になっても大丈夫なよう、近年作成する企業の多い「統合報告書」を中心に各種報告書について紹介します。

なぜ企業が様々な報告書を出すようになったか

企業がこれだけいろいろな種類の報告書を作るようになったのは、「数字にあらわれない企業の情報」への投資家の関心が強まっていったことが一番の理由といえます。

CSR(Corporate Social Responsibility)ともいわれる企業の社会的責任を反映させた投資スタイルは、1960年代にベトナム戦争の反戦運動の高まりを受けて発展したといわれています。

1990年代には環境破壊や短期投資による金融危機といった社会問題を受けて、「ESG(環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字)」の問題に取り組む企業への投資であるESG投資が広まりました。

ESG投資の世界規模が2020年の時点で35兆ドルを超えたことからも、今や「ESG」は企業にとって見過ごせない理念だといえます。[注1]

企業は財務情報だけでなく、環境保護や社会改善に対する考えや活動についてステークホルダーに開示しなければならなくなり、決算報告や有価証券報告書以外にも様々な種類の報告書を作成するようになりました。

 

企業がステークホルダー向けに作る主な報告書

アニュアルレポート

「年次報告書」とも呼ばれるアニュアルレポートは、一年間の経営状況や財務状況をまとめて年度末にステークホルダーに開示する報告書です。

決算短信などとは異なり、財務データだけでなく企業理念や経営戦略など数字では表せない内容も自由に載せられます。

 

CSR報告書・環境報告書

CSR報告書は、CSR(社会的責任)の考えに基づいた企業の環境問題・社会問題へのビジョンや活動内容をまとめた報告書です。

日本では1990年代から事業内容の環境への影響などをまとめた「環境報告書」を作成する企業が増えましたが、この環境報告書に社会・労働的な責務の情報を載せる形で「CSR報告書」がつくられるようになりました。

 

統合報告書・統合レポート

統合報告書は統合レポートとも呼ばれ、企業の持つ資源や社会貢献など様々な要素を統合させてつくられた経営戦略や将来へのビジョンを簡潔にまとめた報告書です。

財務データやCSR情報がまとめて掲載されており、アニュアルレポートとは違い、何年間にもおよぶ中長期的な経営ビジョンのもと作成されています。

経済産業省では2017年に統合報告書の作成に欠かせない「価値創造プロセス」のための6つの要素を掲げた「価値協創ガイダンス」を公表しています。[注2]

 

「価値創造プロセス」のための6つの要素

  1. 価値観(経営戦略を立てる上での基礎的な価値基準)
  2. ビジネスモデル(企業活動を通じて顧客・社会に価値を与える方法)
  3. 持続可能性(価値創出のプロセスを持続させる方法)
  4. 戦略(社内資産や対外関係を保ちながらビジネスモデルを実現する方法)
  5. KPI(企業の価値創出を分析、評価する方法)
  6. ガバナンス(財務や経営の状況を監査する方法)

こうした価値創造プロセスは企業のパーパス(企業の存在意義)とも密接に関わります。

食品会社であれば商品を通じた心身の健康促進、鉄道会社であれば事業を展開している地域の持続的な発展のサポートなど、事業内容を通じた持続可能な社会への貢献はパーパスとしても十分な存在感を持っています。

ようちゃん
ようちゃん

パーパスを使ったインナーブランディングに関しては、こちらの記事もお読みください!

 

「統合報告書」を出す企業が増えているワケ

現在、日本では企業の統合報告書の提出は法律で義務付けられていません。

しかし統合報告書を制作する日本企業の数は世界的に見てもかなり多いです。

特に顕著にみられるのが、それまで作成してきたCSR報告書の代わりに統合報告書を作成する企業。

背景には欧米各国での会社法改正が挙げられます。

例えば、EUでは2013年に会社法が改正され、一定の規模以上の企業は環境・社会・雇用の問題に関して情報開示する規定が盛り込まれました。[注3]

しかしCSR関連の内容が膨大になりすぎると、財務データなど今まで記載していた重要情報が埋没してしまうリスクがあります。

統合報告書を作成するのは、ステークホルダーに企業の財務・CSR情報を一括で把握してもらうためだと言えるでしょう。

 

統合報告書は投資家・企業両方にメリットがある

統合報告書を開示することは投資家だけでなく、企業にも大きなメリットがあります。

統合報告書を出すメリット

  • 経営ビジョンや経営戦略をより明確に修正できる
  • 企業とステークホルダーのコミュニケーションが増える
  • 社内全体で企業理念やビジョンが共有しやすくなる

ステークホルダーとのコミュニケーションの中で、企業が持つ明確な経営ビジョンを理解してもらえれば、より良好な関係を築きやすくなります。

また自社の事業における強みや弱みを再認識して、今の経営方針を見直すきっかけにもなるため企業側にとっても実はメリットが大きいのです。

統合報告書はあらゆる情報を一冊にまとめたものなので、構成レイアウトが適切に組まれていなければ、どこに何が書かれている分かりづらい読み手に不親切な統合報告書となってしまうことがあります。

統合報告書は企業のイメージアップのためのコンテンツでもあるため、中身のデザインも読みやすく明るいものにしたいですよね。

でも色々なジャンルのことを伝わりやすくコンパクトにまとめるのがそもそも苦手…という方は、外部の会社からのサポートを受けながら統合報告書を作ってみるのも手です。

弊社でも、科学的なアプローチで測量・定量化された「ユニバーサルコミュニケーションデザイン」のもと誰にでも伝わりやすい報告書制作のサポートを行っています。

興味ある方は弊社の公式サイトや関連サービスをご覧ください。

 

統合報告書は企業の「色」を伝える役割を持つ

統合報告書には、数字では表せない企業の思いや取り組みを投資家たちに伝えることで企業とステークホルダーの橋渡しをする重要な役割があります。

統合報告書をつくるには、財政データからKPIまで企業のあらゆる側面の情報をかいつまんで、それぞれを結び付けて一つのビジョンにまとめる必要があるため、作成の手間は相当なものになりますが、その分対外的なアピール効果も大きいですよ。

 

・関連資料のリンク

[注1] Reuters : “Analysis: Musk’s ESG attack spotlights $35 trillion industry confusion”
[注2] 経済産業省:「企業と投資家の対話のための「価値協創ガイダンス」」
[注3]European Commission : “Corporate sustainability reporting”

 

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