メーカーに入社した方なら自分が研究・開発している技術について、技術報告書を作成する機会が出てくるかと思います。
ちゃんとしたまじめな文章、大学などで論文を執筆した経験があまりないとどんな風に書き進めたらいいか分からないですよね。
しかし最低限のポイントさえしっかりおさえていれば、思ったよりも簡単に技術報告書を作成できるんです。
そこで今回は技術報告書をどう書けばいいか説明していきます。
そもそもなぜ技術報告書を書くのか
① 研究調査した内容をまとめて記録する
技術報告書は自分が行った研究や調査からどんな結論に至ったか端的にまとめています。
そしてその研究内容をさらにブラッシュアップしていくことで、最終的に新たな技術が製造現場などで活用されます。
せっかく新たな技術が生まれても知見を現場で共有できていなければ、その技術は活用されずに宝の持ち腐れとなります。
自分が携わった技術を世の中に活躍させるためにも、研究内容を仲間内で共有できる技術報告書は必須です。
② トラブルを防ぐための道具となる
開発されたばかりの新たな技術には、まだ分からないことも多く将来的に何かしらのトラブルが発生する可能性もあり得ます。
もし研究段階で何かしらのリスクが起こるかもしれないと分かっていれば、技術報告書に書き留めることで開発者の落ち度もありません。
また参考文献を明記することで、技術報告書の内容を批判する意見があっても正しく反論するための論拠とすることができます。
しかし研究開発の業務だけでも手いっぱいなのに、まとまった時間を技術報告書の作成に割くことはできないという方も多いかもしれません。
そこでなるはやで技術報告書を作成できるよう、技術報告書の書き方の基礎をまとめてみました。
技術報告書の「骨組み」と「肉付け」
どんな内容であっても、基本的な技術報告書の骨組みは変わりません。
一般的な技術報告書の構造は以下のようになっています。
① 序論 | ・現状で解決されていないものごと ・上記を踏まえた技術研究の目的 ・研究調査前の段階での仮説 など |
② 概要 | ・研究報告書の大まかな流れ ・先行研究がある場合はその概要 など |
③ 本論 | ・研究調査の方法や手順 ・研究調査に関する数式や方程式 ・研究調査の結果 ・研究結果から導き出せる考察 など 他にも研究調査を実施した場合は、その分本論の段落を追加する |
④ 結論 | ・研究結果の総評 ・今後の課題や展望 など |
⑤ 用語解説・参考文献 |
いずれも技術報告書を構成する重要な要素なので、基本的にはこの骨組みをもとにして各部分に文章を付け加えていきます。
また研究や調査にあたって協力者がいた場合は、最後に謝辞を付け加えることもあります。
まずは技術報告書に書けそうなネタを情報整理しよう
最初に序論・本論・結論の軸となる主題を決めます。
どんな技術の研究調査でも必ずスタート地点(研究を行う目的)とゴール地点(研究による結果)はあります。
技術報告書では序論はスタートとなる目的、結論はゴールとなる研究結果、本論はその過程の様子のことをメインにまとめていきます。
いきなりまとまった文章を書くのは難しいという方は、書きたい内容を以下のように箇条書きにしてみるのがおすすめです。
【実験の過程】
- ひらがなの文字は〇〇pt未満だと一気に認識できた割合が下がる
- 漢字はその字の画数によって認識できる割合にばらつきが見られた
- 今回の実験では「ね」と「れ」の誤読が最も見られた
他にも今、自分が覚えている情報をマインドマップなどの図式にすべて書き起こしてみると、どの情報を入れるべきか考えやすくなります。
なるべく中身のある技術報告書にしようとして、内容を必要以上に詳しく載せるのはNGです。
本人としては丁寧にまとめたつもりでも、かえって情報があふれすぎてしまい理解しにくい文章となってしまいます。
報告書の構造とは関係ない話題が入らないよう、論文の内容として使える情報を取捨選択していきましょう。
技術報告書を実際に書く際のポイント
実際に報告書の文章を書く際、まずはそれぞれの段落で要となる一文を書いてみましょう。
序論なら「〇〇には現状、~~という課題がある。」、結論なら「〇〇は××の状態になると◇◇であることが実験で分かった。」という感じで段落の頭で主題を述べていき、その次の文から主題の補足説明が始まるという形でまとめるのが大切です。
段落の最初で要点が分かれば、その段落が長くなっても内容が理解しやすくなりますよ。
読み手を意識した書き方をこころがけよう
読みやすい文章は読む人のことを意識してつくられています。
きちんと研究内容が伝わるよう、特に以下の点を守って書くことが肝要です。
一文一文を簡潔にまとめる
一つの文にあれもこれもと情報を載せすぎると、文が長くなってしまい主語が分かりにくくなります。
区切りのいいところで句読点を打つなどして長い文は小分けしましょう。
わかりやすい表現を心がける
報告書だからといって、無理に難しい表現を使いすぎないようにしましょう。
意味を誤認して使うおそれもあり、内容が正しく伝わりづらいリスクがあります。
もしより分かりやすく言い換えられるところがあれば、適宜調整するのがおすすめ。
また言い換える際は、「まだまだ」「すごい」「だけど」といった話し言葉をうっかり使ってしまわないよう心がけましょう。
主観的すぎず客観的すぎない言い方で
研究結果から導き出した考えを結論で述べることは必須です。
しかし結果を自分の都合がいいように解釈して、主観的な考察を書いてしまうのはもちろんNG。
自分の予想とそぐわなかった部分も含めた上で研究結果をまとめないと、嘘のある技術報告書となってしまいます。
反対に客観的な書き方を意識しすぎて自分の考察を全く入れない文章になってしまうと、主体性に乏しく筆者が技術報告書で何を伝えたいのか分かりにくくなってしまいます。
考察については誰が見ても問題なく要点や主観が伝わるよう書かなければいけません。
不安な方は書き終わった文章を周囲に見てもらい、きちんと言いたいことが伝わったか聞いてみるのも良いでしょう。
完成したらJ-STAGEで公開しよう
技術報告書は完成したら終わりではなく、より多くの人の目に留まるようWEBで公開します。
世界中に公開することで研究調査の評価が集まりやすくなるほか、所属している企業や団体の名前を広められてブランド力の向上にもつながります。
技術報告書の公開先として、 近年利用者が増えているのが電子ジャーナルのポータルサイト・J-STAGEです。
J-STAGEは政府機関の科学技術振興機構が運営しており、論文や各種報告書の公開・閲覧が誰でも無料でできるのが最大の特徴です。
1ヶ月で1億以上のアクセス数を誇るサイトのため、マツダ自動車やパナソニックといった大手メーカーからの投稿も多く見られます。
ちなみに公開の手順はJ-STAGEの会員アカウントを作ってログインして、記事の原稿ファイルをPDFかWEBページとしてアップロードしてタイトルなどの項目を設定するだけでOKです。
技術報告書を読む人を意識して書こう
新たな技術が開発されたとき、自身の成果や展望をより多くの人に見てもらいより多くの評価をもらうために技術報告書を作るのが鉄則です。
まとまった内容の文書にするために、まずは研究や調査の詳細情報を挙げていき考察を導き出します。
次に一般的な文章構造にならって、研究の目的となる序論、研究の経緯となる本論、研究結果から出た考察や展望をまとめた結論をそれぞれ加筆していきます。
誰にでも内容が伝わるよう、余分な情報を入れずに分かりやすい表現で一文一文をコンパクトにまとめるのが重要です。
技術報告書が出来上がったら、J-STAGEに投稿して誰でも自由に閲覧できるようにしておきましょう。
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