営業やマーケティングの担当者の中には、ポスターやパンフレットなど販促や宣伝のツールを制作した経験がある方も多いかと思います。
商品やサービスの名前を覚えて好印象を持ってもらうには、見栄えのいい画像やイラストを掲載するのも効果的ですがフォントの選び方も大切です。
どうせなら商品のイメージにぴったり合うフォントを使いたいけど、今使っているパソコンにはなかなかそんなものは見つからない…。
そんな方におすすめなのが、費用を抑えながらあらゆるフォントを試して利用できる「フォントのサブスクサービス」です。
今回はフォントのサブスクを利用するメリットや実際にどんなサービスがあるのかを紹介します。
フォントを「新たに追加する」ということ
そもそもフォントを新しく追加した経験がない人もいるかと思いますので、まずはPCやスマホで使うフォントについてちょっとおさらいしたいと思います。
フォントにはPCやスマートフォンなどに最初から搭載されているフォント以外にも、外部から新たにファイルをダウンロードして導入する有料フォントがあります。
元から導入されているフォントの中には特に広く使われている「メイリオ」や「ヒラギノ角ゴ」は、多くの方が名前を聞いたことがあると思います。
一方、有料フォントは日本語に対応している和文フォントだけでも数千種類以上はあるといわれています。
そのため一言で「明朝体のフォント」といってもさまざまな種類があり、それぞれ画線の太さや形状などが微妙に異なっています。
商用利用が可能な点や対応している文字の多さから、ビジネスで使うには圧倒的に有料フォントが向いています。
ただTPOに応じてあらゆるフォントを使い分けるとなると、それだけフォントを購入しなければならず予算が高くなってしまいやすいです。
フォントのサブスクの特徴とメリット
一般的にフォントのサブスクサービスは、1年間のプランに契約して数百から数千ものフォントを自由に利用できるというものが多いです。
契約した後はメーカーのWEBサイトなどからフォントをダウンロードしてインストールすれば、そのフォントを利用できるようになります。
従来は数種類のフォントをパックとして売り出したものが主流で、フォント1つあたりにかかる費用は大体は数千円となります。
これに対してフォントのサブスクサービスは、1年間の契約費用から見ると1つのフォントあたり100円未満におさえられるといえます。
いろいろとフォントを使い分けられることにより、思わぬ形でコンテンツの雰囲気に合うようなフォントが見つかる可能性があるのもフォントのサブスクの特徴です。
メーカーが出しているフォントのパックには、「ゴシック体系フォントパック」のように同じ系統のフォントをまとめたものもあります。
同じようなフォントで統一感を出しながら適宜使い分けるといった使い方ができる一方、デザインごとに違和感のないフォントを使いたいときは他のフォントパックを購入しないといけません。
なのでどのフォントが合うのか試行錯誤を繰り返しながら使い分けたい、といったときにはフォントのサブスクが向いているのです。
主なサブスクサービスの4つの事例
フォントのサブスクとして代表的なものを4つほど紹介いたします。
サービス事例その1:「モリサワフォント」
日本国内の最大手フォントメーカー、モリサワが手がけるサブスクサービスです。
スタンダードプランは商標登録での利用が可能なため、商品や企業のロゴにも利用することができます。
サービス事例その2:「LETS」
プランに応じて、老舗メーカーであるイワタやモトヤなど様々なメーカーのフォントを自由に利用できます。
またダウンロードしたフォントをゲームやアプリへ組み込める機能もあるため、UI面での制作にいろいろ役立ちそうですね。
サービス事例その3:「FONTPLUS」
上述したLETSを運用するフォントワークス社が手がけているサブスクサービスです。
WEBサイトの本文にも利用できるのが特徴で、月々の利用料金の額もフォントを導入しているWEBページのPV数に応じて変動します。
サービス事例その4:「Adobe Fonts」
Adobeが運用しているサブスクサービスで、Adobeのライセンスをもともと持っている方は追加料金なしで利用できます。
世界中のフォントメーカーやパートナーと提携しているため20,000種類以上のフォントが利用できて、和文フォントだけでも650種類以上あるラインナップの豊富さが特徴です。
フォントのサブスクを使用する際のポイント
実際にサブスクサービスを利用し始めて、フォントをダウンロードする前に確認しておきたいことが3点あります。
① WEBサイトへの利用が可能か
商用での利用が可能だと明記されているものも、WEBサイトのテキスト用のフォントとして使うのは認められていないことが多いので要注意です。
これは印刷物あるいはWEBコンテンツでも画像や動画のテキストにフォントを利用するのはOKでも、WEBサイトの本文自体にダウンロードしたテキストで装飾するのはできないということです。
WEBサイトの文章で特定のフォントを使用している場合、そのフォントが入っていないデバイスでも表示できるようにフォントファイルが共有されてしまいます。
つまりそのページへアクセスした人なら、購入者でなくても誰でもフォントを使えるような状況となってしまうのです。
メーカー側でWEBサイトへの利用が認められているプランやパックとそうでないものに分けていることが多いので、事前にきちんと確認しておきましょう。
② どれぐらいの文字数を収録しているか
メーカーが出しているフォントなら、日常的に使われている漢字はもちろん「髙」や「邊」といった異体字なども問題なく表示できます。
さらにフォントによっては人名でたまに使われる程度の珍しい漢字や、リットルやメートルといった単位の略符号などの特殊な文字まで収録されています。
フォントに収録されている文字数を確認するには、説明欄などで以下のどの表記があるかを見てください。
表記 | 文字数 |
---|---|
Standard | 9,354文字 |
Pro | 15,444文字 |
Pro5、Pr5 | 20,317文字 |
Pro6、Pr6 | 23,060文字 |
ちなみに「ProN」のように末尾にNの字が入っているものは、「辻」などの字でしんにょうの点が一つのものと二つのものを両方表示できるなど、より少し多めに漢字を収録しています。
例えばフルタチさんという名前を変換すると、「古舘」はどのフォントでも出せるものの「古舘(舘の左下が舌ではなく吉の字になっている)」の場合はStandardでは「古舘」としか表示されません。
人名や地名に使われている漢字を正しく表示させたい場合には、Pro以降のたくさんの漢字に対応した種類のフォントが向いています。
③ UDフォントとして設計されているか
公共施設の案内板や、自治体が出すパンフレットなど老若男女問わずあらゆる人に向けて情報を表示させるものの場合、字の読みやすさや見やすさは特に重要です。
高齢や病気などによる視力の低下や視覚の異常により必要な情報が取得できなくなって、健康や財産などに何かしらの損害が生じてはいけないからです。
誰でも見やすいテキストデザインを実現させるなら、ユニバーサルデザインに基づいて設計された「UDフォント」を使用するのがおすすめです。
UDフォントはいつどんな状況でも誰もが問題なく文字情報を視認しやすいよう、特別に開発されています。
実際に小学校の教科書や東京都の防災ハンドブックなど、公共性の高い書籍などに多く利用されており、サブスクサービスを利用し始める際にUDフォントがないか確認しておくのもよいでしょう。
フォントを色々試して使ってみたい方におすすめ
有料フォントのサブスクサービスは、現在国内外の多くのメーカーにて提供されています。
様々なフォントの中から良さそうなものをピックアップして試行錯誤できるので、コンテンツの雰囲気に応じたものを使い分けたい方にはおすすめです。
ただしWEBコンテンツに利用できるかどうかなど、メーカーやプランによって使い方やルールがそれぞれ異なるので気を付けましょう。