昨年はあらゆるところで「サステナビリティ」や「SDGs」という言葉を耳にしてきたと思います。
カラフルなピクトグラムとともに17個の社会的・環境的な目標が描かれた図もすっかりおなじみになりました。
とはいえ急に広まった言葉なので「本当に会社や団体が実践しているのかな」といまいち実感が沸かなかった人もいるはず。
そこで、今回は去年の世界各地のニュースから、SDGsに関する取り組みを17のゴールで振り返りたいと思います。
ようちゃん
SDGs・17のゴールで振り返る2021年
① 「貧困をなくそう」
アフリカ連合は54ヵ国が参加するアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の運用を開始しました。
アフリカ大陸域内の関税を撤廃し共通ルールを設けることで、自由貿易を促進してアフリカ諸国の経済発展による自立的な貧困問題の解決を目指しています。
② 「飢餓をゼロに」
クボタなどの農機メーカーはドローン、衛星、AI、IoTなどのデジタル技術を連携させた「スマート農業」の実現を目指しています。
スマート農業により世界中で食糧生産を効率化することで食糧不足問題の解決につながります。
③ 「すべての人に健康と福祉を」
4月イギリスのグラクソ・スミスクラインは世界初のマラリアワクチン「RTS,S/AS01」を開発、アフリカの児童への接種が始まりました。
毎年約40万人にのぼっていたマラリアによる死者数も、今後のワクチン改良で減少が見込まれます。
④ 「質の高い教育をみんなに」
ファーウェイとユネスコは包括的な教育をアフリカ中に提供するため、オンライン教育のプロジェクトを始動させました。
場所や時間の制限なく自由に学べられるよう、現在、現地政府などと共にシステムを整備しています。
⑤ 「ジェンダー平等を実現しよう」
コカ・コーラ社は2010年からの10年間、5万人の女性の社会進出を経済的に支援する「5by20」の活動を行いました。
同社が支援してきた女性はトータルで6万人を超えており、プロジェクトが完了した現在も女性への支援は引き続き行われています。
⑥ 「安全な水とトイレを世界中に」
スイス連邦工科大学は、ガラス版を太陽の放射熱の反射により冷やすことで空気中の水蒸気から水滴を生成する装置を開発しました。
将来的には、水不足で悩む地域に貴重な水源を提供してくれることでしょう。
⑦ 「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
石炭由来のエネルギーへの依存から脱却させるため、ドイツ政府は「アフリカの持続可能なエネルギー基金(SEFA)」のクリーンエネルギー導入事業に1億ドル以上の支援をおこなうことを発表しました。
安定した電力を供給させることで地域の経済発展の支援にもつながります。
⑧ 「働きがいも 経済成長も」
昨年、アップルやマイクロソフトなど世界的大企業が続々と現代的な奴隷制度と戦う声明を発表しており、各社のサプライチェーンに強制労働・児童労働を黙認する企業がはいらないようCSRを遵守しています。
⑨ 「産業と技術革新の基盤をつくろう」
オーストラリアでは、海岸沿いの道路に従来のセメントよりもCO2を出さないサトウキビの灰を用いる技術の研究が進められています。
インドやブラジルなどサトウキビが入手できる場所ならどこでも技術を応用できるのも特徴です。
⑩ 「人や国の不平等をなくそう」
米国のメディチ・ランド・ガバナンス社はブロックチェーンを活用した土地の管理システムをアフリカやカリブ海地域で運用しています。
違法行為を防ぎ、健全な土地活用を保護することで土地所有者の利益を守り、経済的な不平等の是正を目指します。
⑪ 「住み続けられるまちづくりを」
現在、アフリカでは3Dプリンティングで建てられた住宅が増えています。
鉄筋コンクリートや鉄骨などを使わないことでCO2の排出を大きく削減したほか、建設費をおさえることでアフリカの都市部などの貧困層でも所有できるようにしています。
⑫ 「つくる責任 つかう責任」
スウェーデンの企業、SSABは炭素のかわりに水素を使った鋼鉄の製造に世界で初めて成功しました。
この製造技術が広まれば、スウェーデン国内のCO2の総排出量を10%も減らせる可能性があるといわれています。
⑬ 「気候変動に具体的な対策を」
スタートアップ企業のPachamaでは、人工衛星とAIを駆使して世界中の森林資源やCO2の動きなどを観測しています。
CO2の排出量を測定したデータは、カーボンオフセットのためのクレジットの運用に役立てています。
⑭ 「海の豊かさを守ろう」
スイスでは海洋汚染の主な原因であるプラスチックごみのリサイクルに関するスタートアップ企業が多く生まれています。
中でもデポリー社やgr3n社はエネルギーをあまり使わずにリサイクルできる新技術を生み出しており、海洋ごみの削減に貢献しそうです。
⑮ 「陸の豊かさも守ろう」
日立製作所は、森の中に棲息する動物たちの声の変化をAIが分析することで、森林への不法侵入を素早く察知できる監視システムを開発しました。
違法伐採を抑制することで生態系や森林資源の保護につながります。
⑯ 「平和と公正をすべての人に」
皇室や総理大臣の衣装も手掛けるミャンマー系日本人のファッションデザイナー・渋谷ザニー氏は昨年、政治的な弾圧を受けている祖国を社会的に支援する「フル・ムーン基金」を設立しました。
⑰ 「パートナーシップで目標を達成しよう」
ソフトバンクは世界中の通信企業などと連携して、通信プラットフォームの役割を持つ人工衛星で電波を空から届ける非地上系ネットワーク(NTN)の研究に取り組んでいます。
最終的には電波が届かない「通信の空白地帯」がなくなるよう目指しています。
ベンチャーも大手も「持続性」を考えていた1年でした!
2021年は世界中の企業や人々が社会的持続性・環境的持続性について考えていた一年でした。
業種や規模などに関係なく自分たちにできることは何かをしっかり把握して、企業活動のかたわら取り組みを継続している姿がどの企業にも強く見受けられます。
もちろん、このような取り組みは去年ちょこっとやっただけでは効果はそれほどありません。
なので今後も持続性を意識した取り組みが続々と出てきそうで期待できますね。
・関連資料のリンク
[注1] 「アフリカ自由貿易圏(AfCFTA)協定が運用を開始、何が変わるか」
[注2] クボタのスマート農業
[注3] 「初のマラリアワクチン、WHOがアフリカの子供への使用推奨」
[注4]「ファーウェイとユネスコ、アフリカでデジタル教育システムのプロジェクトを実施」
[注5] 「コカコーラ社、女性の活躍支援プロジェクト「5by20」で 女性起業家を支援する 新たな取り組みを開始」
[注6]「大気から飲料水を作る――電力不要で24時間稼働できる集水装置を開発」
[注7]“Germany commits €100 million to SEFA to unlock private investment in renewable energy”
[注8]「マイクロソフトやアップル、「現代の奴隷制」対策明かす」
[注9] How can we reduce our carbon footprint and build more resilient roads?
[注10] MEDICI LAND GOVERNANCE社
[注11]「14Trees、アフリカに手頃な価格の住宅や学校を建設するプロジェクトを展開」
[注12]「SSAB:スウェーデンの水素還元製鉄計画「ハイブリット」、関係3社が提言書」
[注13]「炭素市場を通じて世界の森林再生を支援するPachama」
[注14]「カナダ人化学者、スイスで廃プラスチックのリサイクル新技術開発」
[注15]「日立、熱帯雨林での違法伐採を防ぐ「監視システム」開発」
[注16]「渋谷ザニーさん 祖国ミャンマーへの思い」
[注17]「地球上に存在する通信の空白地帯をゼロへ。非地上系ネットワークの挑戦」
・関連資料のダウンロード
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