1990年代中盤から2010年ごろまでの期間に生まれた人たちは「Z世代」と呼ばれており、今後社会の中心的な役割を果たしていく世代といわれています。
Z世代は生まれたころからインターネットが普及している「デジタルネイティブ」の世代なので情報収集に長けていて、常に流行や社会情勢に対してアンテナを張っている人も多いです。
そんなZ世代にとって、近年ニュースなどで目にするサステナビリティやSDGsがどのように映っているのか、Z世代の価値観をもとにまとめてみました。
Z世代はネット過渡期と不安定な情勢の中で育ってきた
Z世代が幼少期を過ごしてきた2000年から2020年までの時代は、インターネットやスマートフォンが普及して世界中の誰とでも交流できるようになった一方、世界的な不景気や記録的な大災害が頻発しました。
そうした時代背景から、Z世代は自他の感性や意見を大事にしつつ、現実主義で安定志向な価値観を持つようになりました。
Z世代は若いうちからSNSやインターネットで多種多様な文化や生活スタイルに触れてきているため、ジェンダーレスをはじめとした多様な価値観にも抵抗なく馴染めています。
またバブル崩壊後の長い景気低迷期を過ごしてきたため、Z世代は上の世代よりも金銭感覚や人生観が堅実だと言われています。
酒造メーカー「沢の鶴」が2022年に行った調査ではZ世代やその上のミレニアム世代は、チャレンジしたい意欲よりも失敗したくない気持ちが高い人が多いことがうかがえます。[注1]
Z世代の消費に対する価値観の変化
Z世代の消費傾向の大きな要素として「イミ消費」が挙げられます。
イミ消費とは、商品を購入する「モノ消費」やサービスを体験する「コト消費」だけでなく、ある目的から商品やサービスを選んで購入する消費行動です。
例えばタピオカやマリトッツォが近年流行したのも、食べるだけでなく写真を撮ってTwitterやInstagramに投稿するという目的で買う人が増えたからです。
また「エモ消費」や「推し活」も、Z世代の消費傾向を語るうえでは重要です。
Z世代のライフスタイルと「エモ」「推し」
エモとは感情を意味するemotionの略で、感情が動かされた「エモい」ものを購入したり、自分の熱愛するものである「推し」を支えるため商品やサービスを購入したりすることがZ世代のライフスタイルの一部となっています。
昭和後期や平成のレトロブームがエモ消費の代表例といえます。
電子機器がごく身近な存在であるZ世代にとっては、使い捨てカメラなどアナログなものがかえって魅力的なものに感じられ、ブームへと発展していきました。
こうした傾向からZ世代には、自分の価値観や購入目的にあった商品やサービスを購入して利用する特徴があるといえます。
Z世代の社会的価値観と「SDGs」
Z世代にとって企業の行動は、価格や品質と並ぶ商品選択時の判断基準となっています。
2018年には有名ファッションブランドが在庫商品を焼却処分している様子が拡散されて、世界的に不買運動が発生する事件がありました。
反対に企業の行動が肯定的にとらえられれば、自然とブランドイメージの向上につながるでしょう。
そうした意味では、SDGsで取り上げられている環境・社会問題は先述した「イミ消費」のきっかけになりやすいです。
フェアトレード商品やプラスチックを使わない製品の利用や売上の一部が寄付や支援に使われる店舗での購入は、買い物と同時に世の中の役に立ちたいという気持ちを満たす「意義」を果たしてくれます。
Z世代の社会観と「エシカル疲れ」
米国のリサーチ会社・コーンコミュニケーションが2017年に行った調査では、Z世代の94%が「企業は環境や社会の問題に対応すべきだ」と回答しており、他の世代の回答率が8割程度だったのに比べて高い結果となりました。
他の質問でもZ世代は他のどの世代よりも、社会・環境問題への取り組みに肯定的であることがわかります。[注2]
ドイツのマーケティングリサーチ企業GfKが2020年に実施した調査でも、環境問題などへの意識が高い15~39歳の割合が2010年に比べて2倍以上に増加していて、この年代がリサイクル素材でできた製品やフェアトレードのラベルがついた製品を選びやすいという結果も見られます。[注3]
その一方で、あまりにも自他に社会的な倫理性を求めるばかりに、気疲れしてしまう「エシカル疲れ」にも陥ることもあると言われています。
永続的にZ世代をマーケティングに取り込みたいなら、楽しみながら社会貢献できる「ファン・エシカル」の考え方に沿って顧客のモチベーションを維持させてあげることが大切です。
SDGsは若者の「イミ消費」のきっかけになる!
Z世代は情報収集能力が高いうえ、幼少期から世界的な不況や災害を目の当たりにしてきたために消費に関しては積極的になりにくい一方、モノを購入するコトに目的や意義を見出す「イミ消費」や、モノを通じて感情が動かされる「エモ消費」も増えてきています。
若い世代には環境・社会問題への関心が高い人も多いため、同じような製品やサービスと差別化を図るために、企業や製品が社会の持続性に考慮している点をアピールすれば、若者の「イミ消費」や「エモ消費」へとつながりやすいです。
もちろん大規模な取り組みでなくても、会社がある地域のために何かやるぐらいのことでもアピールする材料としては十分です。
・関連資料のリンク
[注1] 沢の鶴コーポレートサイト:若者世代の「価値観」と「コミュニケーション」に関する調査2022
[注2] 2017 Cone Gen Z CSR Study: How to Speak Z
[注3] GfK – “Environment skeptics are fading fast – replaced by a new breed of self-conscious eco-friendly consumers”
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