SDGsという言葉の流行りも落ち着いた現在でも、サステナビリティ向上に取り組む企業って多いですよね。
特に環境問題に関して、プラスチックを使わない商品を開発したり食品ロスを減らす試みを行ったりあらゆる業界のあらゆる企業がそれぞれ取り組んでいます。
そんな中、印刷業界でもいろんな形で環境への取り組みが行われています。
中でも今回は「脱炭素化」というワードをメインに取り上げたいと思います。
そもそも「脱炭素化」とはどんなもの?
脱炭素化とは、文字通り「二酸化炭素の排出量を減らすための運動」のことです。
石油などの燃料資源が使われ始めた19世紀末から現在にいたるまで、地球全体で0.9度ほど平均気温があがっています。
それと同時にCO2の濃度も産業革命前に比べて40%も増加していることがわかっています。
こうした地球温暖化を食い止めるべく、20世紀末より各国で二酸化炭素などの温室効果ガスを削減する活動が行われるようになりました。
また現在、日本をはじめとする世界各国が人間によるCO2の排出量と植物がCO2を吸収する量が同じ量である「カーボンニュートラル」の2050年までの実現を目指しています。[注1]
こうした活動が実を結んだのか、2019年には前年まで増加傾向にあった温室効果ガスの排出量が横這いになり、2020年はコロナ禍ということもあって、排出量が戦後で最も減少する年となりました。[注2]
2021年8月には国連の機関が「地球温暖化の原因が人間の活動によるもの」だとはっきり断定したこともあり、今後もますます脱炭素化の動きを持続させることが必要です。
各企業の脱炭素化に対する取り組みに関してはこちらの記事も見てくださいね!
「脱炭素化」って具体的にどんなことをするの?
脱炭素化には主に以下のような取り組みがあります。
- カーボンフットプリントなどによるCO2排出量の把握
- 再生可能エネルギーの利用
- 省エネルギー・電力利用の効率化
- 植林などの森林保護活動
カーボンフットプリントとは、個人や企業などがどの活動で二酸化炭素を排出したか示したものです。
ちなみに国内52都市の暮らしに関する家庭での消費カーボンフットプリントを調査した2021年のデータによると、1人あたりの二酸化炭素の年間排出量は平均7.3トンにのぼるそうです。 [注3]
印刷ではどれぐらいCO2が出ている?
印刷業界では、一般社団法人 日本WPA協会が運用している「PrintingGoesGreen」というソフトウェアで、印刷の作業を通して二酸化炭素をいくら出しているのか計測できます。
印刷作業そのものだけでなく、印刷に用いられる用紙やインキを製造、運搬する過程で出たCO2も計算することで、印刷のプロセス全体での排出量がわかります。
PrintingGoesGreenを使って、印刷物1部あたりの二酸化炭素の排出量を測定してみたところ、結果は以下のようになりました。
印刷物 | ページ数 | 印刷部数 | 用紙 | CO2総排出量 | 一部当たり |
A4中綴じ | 16ページ | 2,000部 | コート紙 76.5kg | 0.564t | 282g |
A4中綴じ | 32ページ | 4,000部 | コート紙 76.5kg | 1.10t | 550g |
A4無線綴じ | 64ページ | 8,000部 | コート紙 76.5kg | 2.26t | 1,130g |
A4無線綴じ | 128ページ | 16,000部 | コート紙 76.5kg | 4.21t | 2,105g |
1部の本で2kgものCO2が排出されるのは、思っていたよりも大きい数字でした。
1人あたりの排出量が7トンと考えると、意外と印刷ってCO2を出していますね…。
しかも毎日世界中で無数の書類や新聞が印刷されていることを考慮すると、地球全体で一日に印刷で出る二酸化炭素の量は相当な数値になりそうですね。
さらに見てみると、印刷につかわれる「原反」と呼ばれるロール状の紙の製造や運搬で排出量全体の3分の2を占めていることがわかります。
このようにカーボンフットプリントでどこからCO2がたくさん出るか調べることで、削減のための取り組みを具体的かつ効果的に実施できます。
印刷業界と「カーボンオフセット」
印刷業界では、カーボンフットプリントで算出したCO2排出量をもとにカーボンオフセットを行っています。
カーボンオフセットとは、ある場所でCO2を排出した企業や個人が、別の場所でCO2削減のための活動を行う団体を支援することで、排出した分を相殺する取り組みの総称。
日本では2008年に環境省がカーボンオフセットの指針を公表しており、印刷業界でも日本WPA協会による主導のもと、各企業がカーボンオフセットを支援しています。
先ほどの例なら「A4無線綴じで64ページの印刷物を8,000部」印刷した場合、CO2を総排出量分である2.3トン分削減できるよう植林や省エネ設備の普及、再生可能エネルギーの発電設備の設置などを金銭的にサポートします。
また、地方で環境保全を行う団体を支援することで地域復興などの手助けもできる面もあるので、カーボンオフセットは環境面だけでなく、社会面でもいいことといえますね。
カーボンオフセットの事例はこちらの記事も見てくださいね!
印刷業界でも脱炭素化の取り組みが始まっている
今回は脱炭素化や印刷業界で出る二酸化炭素のことについてまとめてみました。
思っていたよりも印刷で出るCO2の量が多いのは、調べて目をそむけたくなるような事実でしたが、カーボンオフセットなどの取り組みでCO2の減少に貢献できるなら、できるだけ支援したいですね。
もし印刷などを発注する際は、カーボンオフセットなど環境への取り組みを重視しているという点で業者を選ぶのもおすすめですよ。
・関連資料のリンク
[注1] 環境省 脱炭素ポータル:カーボンニュートラルとは
[注2]BBCニュース:世界のCO2排出量、第2次世界大戦以来で最も減少 新型ウイルス対策が要因
[注3] 国立環境研究所:国内52都市における脱炭素型ライフスタイルの効果を定量化
・関連資料のダウンロード
【PDF】 カーボンオフセット価格表 カーボンオフセットをおこなった印刷にはいくらかかるのか価格の目安をまとめました。 | |
【ストリーミング動画】 カーボンオフセットの仕組みについて 脱炭素化と経済活動を両立することができる取り組み、カーボンオフセットの仕組みについてSDGsの観点から解説します。 | |