学習塾や予備校の販促ツールといえば、一昔前までは新聞の折込チラシや紙のダイレクトメールが主流でしたが、個人情報保護の動きやコロナ禍による外出規制などの影響を受けてWEB広告などデジタル媒体のものが中心となりました。
しかしすでにWEB広告でのプロモーションに携わっているところも多く、なかなか思うように成果が出なくて困っている…という方もいることでしょう。
そこで、今回は塾のWEBプロモーションで他社との差別化をはかるには何を意識するべきかまとめました。
「WEB広告」の市場拡大で出てきた課題
コロナ禍などの影響を受けWEB広告は年々市場規模を拡大していき、2021年にははじめてWEB広告費用の総額がマスコミ4媒体(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ)の広告費用の合計総額を上回りました。[注1]
塾のプロモーションも今やWEBコンテンツが中心になっていますが、学習塾だけ見ても全国に事業所の数はおよそ4.6万カ所もあります。
さらに近年では自治体が経営する塾やオンライン授業のアプリなども登場するなど、今や単純に競合他社が増えただけでなく様々な形態のサービスが参入する中でWEBプロモーションを行うのは簡単にいいあらわせないほど大変なこと。[注2]
炎上しないよう無難な内容で告知するのももちろん大事ですが、プロモーション内容が無難なものになりすぎると自らの強みや特徴がうまく伝わらず宣伝効果が低くなってしまいます。
そのような事態を避けるため、まずはうまく差別化ができていない要因を見てみましょう。
WEBプロモーションで差別化できていない大まかな要因
WEBプロモーションで他社との差別化ができていない要因は、広告運用者によっても少しずつ異なりますが今回は「内容の問題」と「方法の問題」について触れていきます。
① 内容が他社のものと差別化できていない
学習塾や予備校の広告は生徒を募集するものや夏期講習や体験教室などイベントを宣伝するものが多いです。
この多くは青空の下で咲く桜の木や制服姿で喜ぶ学生の写真が挿入されており、一目で塾の宣伝だと分かるようになっています。
一方で自社にしかない特徴や個性を押し出していないデザインも多く、競合他社と比較検討がしにくい点も見受けられます。
② 制作環境や能力のあるスタッフの不足
十分な制作環境やスキルを持った人材が準備できず、他社のような見栄えのいいコンテンツが作れないこともWEBプロモーションの差別化ができない理由に挙げられます。
コンテンツが用意できていたとしても、ターゲットとなるユーザー層に表示されるよう広告設定できていなければ十分なプロモーション効果は期待できません。
他にもユーザーが引っ掛かりそうなサジェストやキーワードのリサーチができていなければ、せっかく設定した広告も検索画面などに表示されにくくなってしまいます。
WEBプロモーションを他社と差別化するために
当たり前かもしれませんが、他社と差別化させたWEBプロモーションを行うには自社にしかない特徴を前面に押し出すことや他社とは違うアピール方法を用いることが効果的です。
内容の面でプロモーションの差別化を図る
広告の中身で独自性を出して差別化を図りたい場合でも、広告を通じて伝えたいことは何かを意識してデザインを考えることが一番重要です。
インパクトを強めることにばかり気を取られて、結局一目では何も伝わらないような広告が出来上がってしまっては本末転倒といえます。
そのためには事前にターゲットとなるペルソナ像をしっかり構築したうえで、塾がアピールしたいことをペルソナのニーズに合わせるよう広告の中身を考えていくのがおすすめです。
試しに塾がアピールしたいこととして2つ例を出して、それぞれのプロモーションの参考例をあげてみました。
合格や成績アップなどの実績を推したい
進学校や有名大学の合格実績は保護者にとって塾を決める重要な判断材料であり、特に地方であれば地元の難関校の名前はぜひとも広告の内容に入れておきたいものです。
よくあるデザインとして「〇〇大学 何名 ××大学 何名」と学校ごとの合格者数を羅列したものや顔写真やコメントとともに合格者を表で並べたものがあります。
塾に入学する前と志望校に合格したときの偏差値や模試点数などの差を入れるなど、さらに情報を加えて塾の「実力」をより直接的にアピールしてみてもよさそうです。
またユニークなキャッチコピーでインパクトを出すのも効果的で、広告の出し方によっては大きな話題性も狙えます。
例えば近畿日本鉄道と阪神電鉄が相互乗り入れを開始した2009年に、近鉄沿線にキャンパスのある近畿大学が阪神電鉄に中づり広告を出したのですが、この時に「近畿大学への近道」と「近」の字を二つ重ねたキャッチコピーを載せることで都市部から大学へのアクセスの良さをアピールしています。[注3]
講師やスタッフの手厚い対応を推したい
生徒にとっては講師への授業の質問やスタッフとの個人的な相談が自由にできる点も、塾を決める上でのポイントとなってきます。
予備校の広告でよく色々な講師が授業を行う様子を流すものがありますが、まずは自分の塾でも講師やスタッフを似たような感じで紹介する広告を試作してみるのも手です。
試作したものを見てみると「面白く話せる講師が多い」「スタッフが皆清潔感がある」といった新たなことに気づくかもしれません。
より話題性を狙うなら講師やスタッフの「キャラクター」に注目するのもよいでしょう。
例えば2017年に青森県が地元の水産物をPRするために作成された、漁師など漁業従事者のトレーディングカード「漁師カード」があります。
現在、100種類以上のカードが手作りされており県外から買い求めに来る人もいるほどの人気を博しています。[注4]
方法の面でプロモーションの差別化を図る
アピールしたいことが決まったからといって、すぐにユニークな広告の案が思いつかない人も多いかと思います。
このような時は広告の中身を下手に変えるより、ターゲットにより届きやすい方法で広告を掲載するのも一つの手。
WEB広告の掲載方法には、出身地域や家族構成などに絞ってピンポイントで表示させられるものも多いので、とにかく少しでも無駄が出ないようプロモーションをかけたい場合は検討してみるのもいいでしょう。
一般的なWEB広告の方法であるリスティング広告や検索連動型広告以外にも、特定のユーザーだけにうまくアピールできる方法として以下の2つが挙げられます。
ジオターゲティング広告を活用する
ジオターゲティング広告とはスマホなどの情報端末から発信された位置情報に応じて表示される広告です。
近年では訪日外国人観光客向けのジオターゲティング広告も増えており、空港や観光地など特定のエリアにいるとき、土産物や日本製品のプロモーションが多く表示されるようになっています。
大手の住宅地図メーカー・ゼンリンの子会社「ゼンリンマーケティングソリューションズ」では自社の持つビッグデータを生かして、企業向けにジオターゲティング広告のサービスを提供しています。
位置情報に加えて、ユーザーの行動履歴も分析して最適なターゲットに広告を配信できるので無駄なくプロモーションが行えます。
クラシファイド広告を活用する
クラシファイド広告は不動産・自動車・求人募集など特定のジャンルや地域に関する広告を複数個まとめてWEBアプリやWEBページに表示させる方法です。
塾を探しているユーザーが自発的にアクセスして広告を見てくれるため、関心度の高いユーザーが集まりやすいのが特徴といえるでしょう。
クラシファイド広告の種類としては最近ではスーパーマーケットやドラッグストアなどの店舗が配信する「WEBチラシ」が多く利用されており、WEBチラシのアプリ「Shufoo!」は全国12万店舗のチラシが掲載されています。
また折込チラシと違いWEBチラシなら、新聞を定期購読していない世帯の方へのアプローチも可能です。
塾のプロモーションは「中身」か「方法」で差をつけよう
塾業界もDXが進められている中、WEBプロモーションを行っているものの競合他社との差別化ができていないところも多いのではないでしょうか。
独自性を出してユーザーの関心を集めるためには、プロモーションの内容か手法について工夫してみるのもよいでしょう。
内容で差をつけるには、何を広告で一番に訴えたいか軸を定めてそこからブレないようにキャッチフレーズやデザインなど具体的なコンテンツの要素を考えていくのが鉄則です。
手法を工夫するならジオターゲティング広告やクラシファイド広告など無駄なくピンポイントにアピールできるやり方もあるので、メリットとデメリットを比較した上で最適な手段を採用してみましょう。
・関連資料のリンク
[注1] 電通ウェブサイト「2021年 日本の広告費|媒体別広告費」
[注2] 経済産業省「平成30年特定サービス産業実態調査」
[注3] 産経新聞「近大革命(8) メディアに取り上げられるユニーク広告を…近畿大学広報部長 世耕石弘」
[注4] 【インタビュー】話題沸騰中「青森の漁師カード」を生んだ「あおもりの肴」の活動内容とは!? | 海と日本PROJECT in 青森県
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