なぜ今、SNS採用が重要なのか?
深刻化する採用難、リアルな情報発信が打開のカギに。
企業における人材確保は、企業の持続可能な成長や競争力を高めていく上で極めて重要な課題ですが、少子高齢化による労働人口の減少は深刻であり、多くの企業で人材獲得が課題となっています。
従来の求人媒体だけに頼っていては、十分な数の応募者を集めることが難しくなってきているのが現状です。
このような状況下で、注目を集めているのがSNSを活用した採用活動、いわゆる「SNS採用」です。
SNSは、従来の求人媒体と比較して圧倒的なリーチ力を誇ります。
株式会社リソースクリエイションが行った調査では、就活時にSNSで社名検索をしている20代は80%を超えるそうです。[注1]
また、ユーザーをセグメントして効果的に情報を届けることができるため、新卒採用・中途採用ともにターゲット層への訴求力が高い点がSNS採用の大きな魅力です。
企業の文化や働く環境、社員の声などリアル感ある内容を発信することで、共感や興味を持った求職者からの応募に繋がり、ミスマッチも防ぎます。
主要SNSプラットフォーム別 活用戦略
X (旧Twitter)
X(旧Twitter)は、月間6,700万人(2025年4月時点)ものアクティブユーザー数を誇ります。
情報感度の高い層やリアルタイムな情報収集を求める層に強く支持されているプラットフォームで、特に若年層の利用率が高く、大学生・大学院生の年代は日常的にXを利用している可能性が非常に高いと言えます。
Xの最大の特徴は、情報の検索性の高さと、ユーザー同士の双方向コミュニケーションに特化している点です。
ハッシュタグを活用することで、特定のテーマに関心のあるユーザーに効率的に情報を届けられます。また、リツイート機能により、発信した情報が瞬時に広範囲に拡散されるため、情報の発信力や影響力が高いのも特徴です。
企業のSNS運用担当者の個性を出す「中の人運用」で人気を博すアカウントも増えています。
Xの運用上の注意点としては、常に最新の情報を継続的に発信する努力が必要です。ユーザーからの返信や引用リポストなどのコミュニケーションにも時間を割く必要があります。
また、匿名性が高いプラットフォームであるため、炎上対策も重要な課題となります。不適切な発言やデリケートな話題への言及は避け、慎重な情報発信を心がけましょう。
さらに、Xのアルゴリズムは頻繁に変化するため、常に最新の情報を把握し、発信方法を柔軟に調整していく必要があります。
Instagramは、国内で6,600万人(2025年4月時点)のアクティブユーザーがいると推定される、視覚的な情報発信に特化したプラットフォームです。特に10代から30代の若年層の利用率が高く、写真や動画を通じた発信の文化が醸成されています。
Instagramの最大の特徴は、写真や動画など視覚的な情報伝達に優れている点で、ビジュアルや映像で、文章だけでは伝わりにくい企業の雰囲気や環境、サービスの魅力を効果的に伝えることができます。
また、ストーリーズという24時間で消えてしまう動画の掲載機能は、気軽に写真や動画を投稿できるので運用ハードルを下げてくれます。
Instagramの運用には、必ず写真や動画といったコンテンツが必要になるため、クオリティの高いコンテンツ作成にはスキルやコスト、時間が必要になります。
さらに、投稿には前述したストーリーズの他にフィード投稿、リール投稿といった3種類を使い分ける必要があり、コンテンツ制作負荷も上がります。
InstagramのアルゴリズムもX同様に頻繁に変化するため、常に最新の情報を把握し、発信方法を柔軟に調整していく必要があります。
TikTok
TikTokは、国内で3,300万人(2025年4月時点)以上のアクティブユーザーがいると推定される、15秒~10分の短尺動画に特化したSNSです。
特に10代から20代の若年層の利用率が高いですが、近年では幅広い年齢層に利用が広がっています。
ユーザーの視聴履歴やインタラクションに基づき、AIが高度にパーソナライズされた動画を次々と表示する強力なレコメンド機能が特徴で、ある程度のフォロワーがいないとバズりにくい他のSNSとは違い、コンテンツ次第では誰でもバズる可能性があります。
また、アプリ内には豊富な音楽、エフェクト、フィルター、テキストなどの編集ツールが提供されており、編集スキルのない方でも比較的容易にコンテンツを用意することができますし、ダンスやチャレンジ企画などのバズっているフォーマットに沿って動画を作成することができるのでコンテンツ案も考えやすいです。
新しいことにチャレンジする柔軟性を持った人材を獲得したいベンチャー企業や、技術継承や組織の若返りを図るために、若い人材を育成したい製造業などの企業はTikTokで採用アカウントを運用し始めています。
YouTube
YouTubeは、Googleが運営する世界最大級の動画共有プラットフォームです。国内のアクティブユーザーは推定7,120万人(2025年4月時点)です。
他のSNSとは違い、長尺の動画を投稿できるのが特徴で、最大12時間、256GBまでアップロードすることができます。
視覚と聴覚からの情報を多く提供できる分、他のSNSより情報量は圧倒的に多くなります。
短尺の動画では伝えきれない社員インタビューやオフィスツアー、座談会などのコンテンツを発信することが可能です
また、利用者数が多いため、従来の求人媒体ではリーチできなかった潜在層へのアプローチも期待できます。
特に、特定のスキルや興味関心を持つユーザーに対して、関連性の高い動画コンテンツを通じて企業を知ってもらうきっかけを作ることにも繋がります。
SNS採用を成功させるためのステップ
SNS採用をやってみたいけど、どこから手をつけたらいいかわからない。という方のために、SNS採用を成功させ、人材を獲得するための主要なステップを解説します。
採用ターゲットの明確化
はじめに、どのような人材を採用したいのかを明確にする必要があります。
年齢、価値観、会社や仕事に求めること、スキル、経験、キャリア志向など、具体的な人物像(ペルソナ)を設定することで、ターゲットはどのSNSプラットフォームを活用しているのか、どんなコンテンツを発信するべきなのかが見えてきます。
今現在自社で活躍している社員の属性や利用SNSの状況を分析すると、ペルソナ像のヒントが見えてきますよ。
KGI、KPIの設定
SNS採用の目標を数値化し、効果測定を可能にするために KGI(Key Goal Indicator)とKPI (Key Performance Indicator)を設定します。
応募数、採用数だけでなく、SNSのエンゲージメント(フォロー、いいね、コメント)、ウェブサイトへの流入数、リーチ数なども重要な指標となります。
また、定期的な効果測定の計画も立てておくといいでしょう。
SNSプラットフォームの選定とアカウント開設・最適化
ステップ1で明確にしたターゲット層が利用している SNSを選定します。
リソースが限られている場合は、最も効果的なSNSに集中した方がいいでしょう。
SNSを選定したら、各SNSのガイドラインに沿って、公式企業アカウントを開設します。
企業情報や事業内容を記載し、採用サイトや求人媒体へのリンクを分かりやすく記載しましょう。
ロゴやカバー画像なども丁寧に設定し、公式アカウントであることがわかりやすいようにすると求職者が混乱しません。
コンテンツ戦略と作成
ターゲット層に響く魅力的なコンテンツを計画し、体系的に発信していくことが重要です。各SNS媒体に合わせた温度感のコンテンツを企画しましょう。
複数名で運用を行う場合には運用管理ツールの導入もおすすめです。軌道に乗るまではスプレッドシートなどでも代用可能です。
どのような情報をいつ、どのプラットフォームで発信するのかを事前に計画したカレンダーのようなかたちで作成するとスムーズです。
投稿内容に上長や関連部門の承認が必要な場合には、いつどのようなかたちで承認を得るか決めておくのがよいです。
効果測定と改善
設定した KPI を定期的に測定し、達成された結果を分析します。効果的な施策は継続し、効果の低い施策は見直し、改善策を実行します。
各SNSが提供する分析ツールや、外部の分析ツールを活用して、投稿のパフォーマンスやユーザーの行動を把握します。
SNSを駆使して、採用活動を成功に導きましょう
SNS採用の重要性から各プラットフォームの特徴、そして具体的な導入ステップについて解説してきました。
SNSは単なる情報発信のツールではなく、企業と求職者をつなげ、相互理解を深めるための架け橋になるプラットフォームです。
労働人口の減少が進む現代において、従来の採用手法だけでは優秀な人材の獲得は困難になっています。
SNS採用は、取り入れたからと言ってすぐに効果が出るものではありません。
継続的な情報発信と改善を繰り返し、企業の魅力を多角的に発信していくことが、採用活動成功への重要な鍵となります。
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[注1] スマホネイティブ世代「2024年卒」80%以上がSNSで企業情報を収集 – オフィスのミカタ