DX(デジタルトランスフォーメーション)は、経済産業省が2018年に『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』を発表したことで広く知られるようになりました。[注1]
多くの企業がDXに取り組んでおり、金融業者もそのなかのひとつです。
今回は金融業界におけるDX(金融DX)について、課題や解決策を解説します。
金融DXに取り組んでいない企業はいまだに多い
金融DXとは、金融にまつわる業務やサービスのデジタル化を図り、業務の効率化、改善を行なうことを意味します。
総務省『令和3年 情報通信白書』からは、金融業・保険業のうち、32.2%が2018年以前からDXに取り組んでおり、サービス業の16.1%と比較すると、金融業・保険業がいかに早くからDXに取り組んでいるかがわかります。[注2]
一方、金融業・保険業であっても、35.7%の企業がDX未実施かつ今後実施の予定がないと回答しています。
金融DX未対応で起こりうるリスク
金融業者がDXに取り組まなかったことで起こりうるリスクとして挙げられるのが、競争力の低下です。
テクノロジーが進化したことで、金融業と非金融業の境が曖昧になっています。
たとえば、ECサイトや家計簿アプリといったように、日常的に使用するサイトやアプリに金融サービスを埋め込んで提供されるケースがあります。
このようなサービスはEmbedded Finance(エンベデッドファイナンス)と呼ばれ、金融DXの新たな流れです。
株式会社日本総合研究所によれば、エンベデッドファイナンス市場は今後以下のように成長すると予想されています。[注3]
提供サービス | 2020年 | 2020年 |
資産運用 | 0.0ドル | 約21億ドル |
貸出 | 約10億ドル | 約16億ドル |
保険 | 約50億ドル | 約71億ドル |
決済 | 約16億ドル | 約141億ドル |
このように著しい成長が予想されるエンベデッドファイナンス市場に参入するうえでは、DXへの対応が必要不可欠です。
金融業界におけるDXの2つの課題
金融DXの課題①:「人材の確保」
金融業界におけるDXの課題として挙げられるのが、人材の確保です。
金融業界ではCOBOLと呼ばれるプログラミング言語が用いられてきました。
同プログラミング言語は1959年に誕生しており、使用していた世代が定年退職を迎えつつあります。
そのため金融業についての知識も備えたIT人材の確保が求められます。
ですが、そのような状況において2025年には日本全体で約45万人のIT人材が不足するとされており、IT人材確保の激化が予想されます。[注1]
金融DXの課題②:「レガシーシステムからの脱却」
金融DXにおけるもう一つの課題として、レガシーシステムの存在もあげられます。
レガシーシステムとは老朽化、複雑化、ブラックボックス化したシステムを指し、約8割の企業が抱えてるとされています。[注1]
金融業界の場合、一部領域を含めて95.3%がレガシーシステムを抱えており、調査対象となった業種中最多です。
レガシーシステムは保守業務が必要になるため、貴重なIT人材を不要な業務に割いてしまうというデメリットにつながります。
金融業界でDXを進めるうえで重要なポイント
金融業界でDXを進めるうえでは、IT人材の確保が欠かせません。
加えて、ロードマップの作成やITガバナンスの強化が求められます。
ロードマップを作成して戦略的にDXを進める
一般社団法人日本能率協会が発表した『日本企業の経営課題 2020』によれば、「DXに対するビジョンや経営戦略、ロードマップが明確に描けていない」と回答した企業は約8割にのぼっています。[注4]
経済産業省も『DXレポート2 中間取りまとめ』にて、以下の3つのプロセスにてDXに取り組むことを推奨しています。[注5]
- 直ちに(超短期)取り組むアクション
- 短期的対応
- 中長期的対応
DXを進める際は、3つのプロセスに基づくロードマップを策定しましょう。
フェーズごとのロードアップがあれば理想と現状の溝が明確になり、効率的なDX推進が可能です。
ITガバナンスの強化
金融庁は2022年6月に『金融機関のシステム障害に関する分析レポート』を発表。
同発表によれば2021年4月から2022年3月を対象とした金融機関のシステム障害のうち、「ソフトウェア障害」と「管理面・人的要因」が半数以上を占めています。
また外部からの不正アクセスは5%と少ない割合ですが報告されています。[注5]
DXを推進させていくためにも、このようなシステム障害のリスクを取り除かなければなりません。
そのため、経営方針に沿ったIT戦略を策定し、システムや運用を自社に最適化するITガバナンスに取り組む必要があります。
金融業界におけるDXに対応して新たなチャンスにつなげる
DXは金融業界に限らず全業種に対応が求められています。
なかでも金融業界におけるDXは、エンベデッドファイナンス市場ほか、新たなビジネスにつながるチャンスでもあります。
金融業と非金融業の境が曖昧となりつつ時代においても事業を拡大するために、ロードマップやITガバナンスを強化してDXに取り組みましょう。
・関連資料のリンク
[注1] 経済産業省│DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~
[注2] 総務省│第1部 特集 デジタルで支える暮らしと経済
[注3] 日本総研│融合する金融と非金融 今後の課題とソリューションとしてのテクノロジー
[注4] 一般社団法人日本能率協会│『日本企業の経営課題 2020』 調査結果【第2弾】
[注5] 経済産業省│DX レポート2 中間取りまとめ(概要)
[注6] 金融庁│金融機関のシステム障害に関する分析レポート
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