高校の英語の授業で、きっと習ってるであろうパーパスという言葉。
マーケティングでやたら出てくる単語で、正直聞いたことない人はいなさそうなレベル。
パーパスの本来の意味は「目的」ですが、マーケティングではそれだけではないニュアンスも含まれているといえるでしょう。
今回はパーパスやパーパス・ドリブンという考え方について、基礎知識からマーケティングにおけるメリットなどを中心に紹介します。
マーケティングプランで役立つ「パーパス・ドリブン」
マーケティングにおいて、パーパスとは「自社の社会的な存在意義」を指しています。
つまり会社が何のために存在するか、社会にとって会社がどうあるべきかを言葉としてまとめたもの。
例えばグーグルでは「世界中の情報を集めて、誰でもいつでもどこでもすぐアクセスできるようにする」というパーパスが掲げられています。
一見すると企業理念と似たもののように感じるかもしれませんが、企業理念は企業自身にとっての意義なのでパーパスとは違うもの。
例えば「美味しいコーヒーを日本中に安く提供したい」が企業理念としたら、「コーヒー豆の輸入を通じて原産国の農家を経済的に支援したい」がパーパスといえるでしょう。
またドリブンには「~~を出発点にした」という意味があり、パーパス・ドリブンは「パーパス起点の、パーパス中心の」と訳せます。
つまりパーパス・ドリブンとは、パーパスの内容を営業や商品開発などといった会社の行動に反映させることです。
例えば家具小売りチェーンのIKEAは、2030年までに自社製品で使われるプラスチックをすべてリサイクルされたプラスチックや再生可能なプラスチックにする目標を掲げています。
この時「プラスチックの使用量を減らして環境保護に貢献している企業でありたい」というパーパスに向けて、製品の材料となるプラスチックの種類を変える試みがパーパス・ドリブンだといえるのです。
パーパス・ドリブンな試みは小さなことからでOK!
企業の存在意義のための取り組みというと、環境保護や経済支援などやたら規模の大きいものが思い浮かぶかと思います。
実際にパーパス・ドリブンに関する事例を見てみても、世界的なブランドによる大規模なものが多いです。
しかしパーパス・ドリブンの考えで大事なのは規模の大小ではなく、実際に社会へ貢献できているかどうかです。
そのため地方の活性化のために工場のある自治体とコラボ商品を出すというような試みでも、産業創出などによる地域社会への貢献に携わっているという意味ではパーパス・ドリブンな取り組みを十分行っているといえます。
ささいなことでもそれにより誰かの生活の質が向上されていれば、パーパス・ドリブンとしては大いに意味があるのです。
パーパス・ドリブンの考えを取り入れるメリット
① 企業全体で明確なビジョンを共有できる
パーパスの実現に向けて企業全体が取り組むことで、社内全体で会社自身のビジョンや課題の共通認識を持ちやすくなります。
企業の従業員とパーパスの関係についてのある認識調査では、パーパスがその会社で働いている理由に少しでも関わっていると答えた方はおよそ半数に達しています。
パーパスをしっかり認識してもらうことで、各部署や各個人が今ビジョンの実現に向けて何をすべきか把握できて、会社全体の統率力も上がりやすくなります。
② ブランドの知名度やイメージ向上につながる
誰にでも分かりやすい明確なパーパスを会社や製品の名前とセットで用いることで、ブランド認知度の向上につなげられます。
「やめられない、とまらない」や「そうだ、京都に行こう」といった有名なフレーズは、社名を伏せていてもどこの会社のものか分かりますよね。
ただ社名を表示するだけでなく、パーパスも一緒に記すことで何に取り組んでいるかイメージと合わせて印象づけてブランドを覚えてもらえるようにできます。
③ 顧客のブランドへの関心を保持させる
商品やサービスを購入する際、そのものの品質・量・価格だけでなく提供元のパーパスを意識して選ぶ顧客は一定数いるといわれています。
博報堂の調べによると、平均で4人に1人という割合で購入基準としてメーカーのパーパスを意識しているようです。[注1]
また共感できるパーパスを掲げるメーカーのものを購入・利用し続けているという人も少なくありません。
そのため多くの人が共感できるパーパスがあれば、パーパス・ドリブンな取り組みにより顧客のリピート率向上も狙えます。
パーパス・ドリブンな試みの主な事例
① イオン
イオン系列の広告や店頭で「私たちは木を植えています」という標語を見たことがある方も多いと思います。
この標語をもとに1990年からイオンでは新規開店時などに植林活動を続けており、2023年2月末の時点で1255万本もの植樹を行ってきました。
同社が一貫して環境保護の活動を進めているのは、イオン創業者の出身地である四日市にて高度経済成長期のころに公害病が発生したことでかねてから環境問題への関心が高かったためと言われています。
現在では植林活動を行った範囲は日本だけでなく、中国やミャンマーなどアジア全体に及んでいます。
② マツダ
マツダは「Be a driver」という標語を掲げており、ドライバーになるという以外にも自分で決めて行動するといった意味が込められています。
2013年にこの標語を採用して以来、同社ではパーパスに則りドライバーにとって楽しめる自動車の開発を進めてきました。
その結果、運転感覚を向上させたグリーンディーゼル車のラインナップを展開し、シートの位置などを人間中心の安全性に基づき設計するなど、環境への配慮や安全性の向上を実現させた「ドライバーが楽しめる自動車」を数多く発表しています。
独自のパーパスにより、業界でも唯一無二なモデルを次々と生み出していったのです。
パーパス・ドリブンな取り組みはブランドイメージにつなげられる
企業が社会にとってどんな存在であるべきか、客観的にまとめた「パーパス」。
このパーパスに基づいた企業の取り組みを実施することは「パーパス・ドリブン」と呼ばれています。
パーパス・ドリブンによる取り組みが認知されれば、企業や製品に良いブランドイメージが持たれやすくなります。
日本国内でもショッピングモールや自動車メーカーなど様々な企業が独自のパーパスに基づいた取り組みや試みを行っています。
決して大規模な活動を行う必要はありません。
パーパスに基づく社会的な取り組みであればささいなことでもいいのです。
パーパスやビジョンを定義している会社の方は、ぜひとも参考にしてみてください。
・関連資料のリンク
[注1] 博報堂「ブランドパーパスに関する生活者調査」レポート