人材の確保は人事担当にとって重要な仕事である一方で、なかなか成果が思うように出ないこともあると思います。
あるアンケートでは人事担当の半分以上の方が、採用活動のプロセスで一番手間がかかることは「募集」と答えています。
うまく人を募集するためには、インパクトがあり目に留まりやすい求人広告を打ち出すことが重要です。
そこで、今回は国内外の人材確保のためのユニークな広告施策をいくつかご紹介します。
求人広告にも「ユニークさ」による差別化は大事
数年前、ある求人広告がネットで話題になったことがあります。
巨大な電光掲示板にWindowsに標準インストールされているペイントのスクリーンショットが映し出され、そこにはつたない手書き文字で「we are looking for graphic designer(グラフィックデザイナーを募集しています)」と書かれているものです。
見た目のインパクトもさることながら、この会社がいかにデザイン関連の人材が足りていないのかが分かります。
広告は単にアピールしたいことを述べればいいわけではありません。
見ている人にとって何か気になると思ってくれるよう、内容やデザインで差別化をはかることが重要です。
もちろん求人広告も同じことがいえます。
ここからは屋外広告、WEBコンテンツ、その他の媒体に関して珍しい施策事例をご紹介します。
ユニークな求人広告の事例:屋外広告編
事例1:国内の自動車メーカー
日本を代表する自動車メーカーのA社は、同社が推進している自動車の自動運転システムを支えるエンジニアを募集するため、ある工業都市を通るJR路線の各駅に違うメッセージの求人広告を設置しました。
この都市に大手電機メーカーの生産・研究拠点が密集していることに着目し、通勤中の技術職の方々に向けた広告を展開しました。
中には自動運転で実現できることなどにも触れて、自らの能力で社会を変えられるというようなエンジニアとしての意欲を沸き立たせるものもあり、大きな反響を呼びました。
事例2:大手検索エンジン会社
世界的な検索エンジン会社のB社は、応募者が多く能力の高い人材を見極めるのが難しいエンジニアの求人広告に彼らのひらめき力を試す要素を付け足しました。
同社ではかつて「{ e (自然対数の底)の連続する10桁の最初に出てくる素数 }.com」とだけ書かれた求人広告を出していました。
正解の10桁の番号が求人用のURLとなっており、アクセスすると別の問題が表示されて、それを正解することで初めて応募できるような仕組みになっています。
この仕組みは正解を求めるのに必要な知識や意欲を持った人材をうまく見つけられる広告として話題になりました。
事例3:通学バスの運行会社
カナダで通学バスの運行を行うC社では、バスの運転手を募集するためユニークな求人広告を立ち上げました。
会社が保有している車体に「学生が学校のない日はあなたも休めます」「多くの親がタダでやってる送り迎えで給料が貰えます」というように、負担なく働けることをアピールした広告文を描いたのです。
同社は都市部の数多くの学校と各家庭を結ぶ路線網を持つだけに、毎日バスを走らせるだけで自然と街中に求人募集のメッセージが伝わる効果が発揮されます。
ユニークな求人広告の事例:WEBコンテンツ編
事例1:生活用品のメーカー
公式WEBサイトの場合、自社の業種や商品にちなんだゲーム要素を求人ページに盛り込むことで差別化をはかれます。
掃除用の「コロコロ」などの商品を手がける日用品メーカーのD社では、ちょっとした遊びを取り入れた求人サイトが公開されています。
ページのトップには巨大なコロコロが表示され、ドラッグしながら上下にスクロールさせることで、会社からのメッセージが見られるような仕組みになっています。
またWEBエントリーを行うにはコロコロを使った謎解きを解く必要があるのも特徴的です。
事例2:スーパーマーケットチェーン
関西や東海に展開しているスーパーマーケットチェーンのE社では、まるでアーティストの公式コンテンツを見ているかのようなおしゃれな求人ページが話題となりました。
黒い背景に社員たちの写真がどこかあやしげな色合いで掲載されているかと思えば、仕入れ担当の人気投票企画を宣伝していたりと、大人の遊び心を詰め込んだかなりのインパクトがある内容となっています。
またページ内には会社案内のWEB動画が埋め込まれており、映画のトレーラーのような雰囲気ながら普段の店舗の様子もしっかり伝わってくる作りになっています。
事例3:水利関係の建設会社
港湾や河川の工事を主に取り扱う建設会社F社では、求人サイトに新卒向けの内容だけでなく、保護者や高校の担任向けの内容も掲載しています。
同社は高卒の応募者を率先力として積極的に採用しており、求人サイトも他社に比べて入社後の研修内容などを細かく明記していて、卒業してすぐ社会に出る不安に対して厚くフォローしているように見受けられます。
先生や保護者に向けたコンテンツがあるのも、会社として新人に責任を持って仕事を教えて育てる姿勢がうかがえます。
全体的に建設会社ながらかつての3Kの悪いイメージがまったくない、明るく働きやすい職場の雰囲気が伝わる内容になっています。
ユニークな求人広告の事例:その他の媒体編
事例1:医療関連の政府機関
南アフリカで医療や福祉の人材の課題を解決する政府機関・G事務所では、国内でかなり不足している医療従事者を募集するため、国外の医師にむけたユニークな募集キャンペーンを行いました。
募集広告のDMには「聴診器でメッセージを聞いてください」と書かれており、同梱された特別な装置に聴診器をあてるよう促しています。
聴診器を装置にあてると中からMP3ファイルが流れて、人材募集のメッセージが聞こえてくるという仕組みです。
聴診器を用いた珍しい広告は世界初の試みで、国際的な広告の賞である「クリオヘルスケア」を獲得しています。
事例2:とある山村のブランド米
2017年、農業人口の減少に悩んでいた農村・H村で、かなり変わった媒体の求人広告が生み出されました。
農家にとって一番のPR材料は自分たちが手がけた農産物という考えのもと、村で生産されたブランド米に農業体験をセットにつけて「求人米」として販売したのです。
大きく「募集」の文字が書かれた袋に入れられ、求人米が都内のアンテナショップなどで売られると、売り切れの店舗が出るほどの人気に。
実際に現地で田植えや稲刈りの体験会が開かれた際には、300人以上の参加者が来ました。
農業に興味のある若者を狙ったユニークな考えが評価され、求人米は同年のグッドデザイン賞を取っています。
事例3:デジタルクリエイティブ代理店
イギリスとアメリカに拠点を置くデジタルクリエイティブの制作会社I社では、任天堂の大人気ゲームシリーズ「どうぶつの森」の舞台となっている村にバーチャルのオフィスを設置して、会社のことをプレーヤーに知ってもらうPRの場としました。
実際の職場の様子をそっくりそのまま再現しており、訪問者はそのまま同社のインターンシップに申し込めるようになっています。
この試みは同社が性別・年代・人種にとらわれず世界中から才能を持つ人材を探したいという思いのもと実施され、専門学校などでデザインを学んだ経験がなくても採用のチャンスがあると話題になりました。
求人広告でまずは会社のイメージを広めよう
人材を集めるための手段として、待遇を改善したり職場の環境を良くしたり給料をあげたり様々なものがあります。
しかし、そもそも会社の名前が就活中の学生たちに知れ渡っていなければどんなに労働環境が良くても人はなかなか集まらないかと思います。
そんなとき、ただ求人広告を出すのではなく、どうしたら彼らの目に留まりやすいかあれこれ工夫を考えてみるのがおすすめです。