「CI」に「BI」…ややこしいアイデンティティに関する言葉の違い

「CI」に「BI」…ややこしいアイデンティティに関する言葉の違いプロモーション

人間ひとり一人が違うように、会社も一社ごとに特徴が異なっていてそれぞれがアイデンティティを持っています。

商品やサービスだけでなく将来のビジョンや歴史、風土など会社のアイデンティティは様々な要素が組み合わさって形成されています。

そんな会社のアイデンティティですが、「コーポレート・アイデンティティ」「ブランド・アイデンティティ」などいろんな言葉が用いられていて、それぞれの違いもわかりにくく感じることってありませんか。

今回は、そんなアイデンティティに関する主な用語の違いについて身近な事例も交えながら解説いたします。

「CI」とは「MI」と「BI」と「VI」をあわせたもの

コーポレート・アイデンティティ(CI)は、企業として社内外に伝えたいことを統一してまとまった形で発信することで、単に企業を知ってもらうだけでなく理念や想いなどを伝えてブランドイメージにつなげていくための戦略です。

洗練されたデザインの公式サイトを見て高級感を抱いたり、開発の様子を描いた商品のCMを見て親近感を抱いたりと、CIを整えることでリードに企業や製品に対してポジティブな感情を持って認識してもらうことができます。

またCIには社外だけでなく社内に情報や理念を発信して波及する効果もあるため、社内で一つの考えを共有することで部署の方向性の統一や社員の意識改善にもつなげられます。

CIには主に「マインド・アイデンティティ(MI)」、「ブランド・アイデンティティ(BI)」、「ビジュアル・アイデンティティ(VI)」の3つの戦略があります。

それぞれMIは企業の「心意気」、BIは企業の「言動」、VIは企業の「身なり」ともいえるもので、3つをまとめたCIは企業の「心象」を左右する要因です。

見た目を取り繕っても性格や考え方が伴わないと印象が良くならない人がいるように、CIも形から入るのではなくしっかりMIの戦略を固めてからBIやVIを制定するのが鉄則とされています。

特徴や制定する際のポイントも異なる3つの戦略について、それぞれ見ていきましょう。

 

MI「マインド・アイデンティティ」

マインド・アイデンティティ(MI)は企業風土や経営者の考えなどをもとにして、「今後企業は何を目指すべきか」「企業の社会的な存在価値は何か」といった企業の理念を見直して社内外に共有する戦略です。

MIは企業の社会的な使命や役割である「パーパス」を中心に、パーパスをより具体的にまとめた「ミッション」、企業の将来ありたい姿をまとめた「ビジョン」、企業活動を通じて顧客に何を提供できるかまとめた「バリュー」、これらの考えを言葉としてまとめた「スローガン」から構成されています。

MIによって「どんな企業と認識してもらいたいか、そのためにはどんな行動をすべきか」が変わってくるため、きちんとMIを制定することはBIやVIの戦略を考える上でも重要になります。

またMIによりパーパスが従業員の行動意識に影響することで、その後の自発性やモチベーションのアップへとつながることもあります。

MIの考えが製品やサービスの開発・製造の礎となって、CI戦略と強く結びつくことも少なくありません。

任天堂は「娯楽を通じて世界中の人々に幸せを届ける」というミッションのもと、誰でも直感的に遊べるゲームコンテンツを長年提供し続けてきました。

CMなども老若男女皆で遊べる様子を描いたことで、「子供以外も楽しめる商品」というブランドイメージの定着に役立ち、実際に年代を問わず世界中の人に親しまれるメーカーとなりました。

 

BI「ブランド・アイデンティティ」

ブランド・アイデンティティ(BI)は制定したCIをもとにサービスやブランドの価値や独自性を見出して顧客に伝えることで、ブランドや企業に対するイメージや認知度を高めるための戦略です。

BIはブランドの社会的な存在価値をあらわす「フィロソフィー」、ブランドによる顧客の利益である「ベネフィット」、ベネフィットの裏付けとなる「属性」、ブランドのイメージを構成するための独自性「パーソナリティ」から成り立つといわれており、一貫したBIを制定することでユーザーへのブランドイメージもより強く印象付けられるようになります。

日本有数の喫茶店チェーン「コメダ珈琲店」は、「くつろげる地域密着型の喫茶店」として他のカフェチェーンにはない独自の存在価値を重視したBI戦略を繰り出しています。

フードメニューが充実していたり、注文をセルフではなくウェイターが運んでくれたりと競合他社ではあまり見られないようなサービスを打ち出すことで、お店として唯一無二の独自性を生みだしてブランドイメージの定着につなげているのです。

一方、飲食業や宿泊業など接客業務のある業種によっては、BIを接客行動や態度などによりCIをあらわす「ビヘイビア・アイデンティティ」とすることもあります。

ビヘイビア・アイデンティティも企業理念や経営者の考えに基づいてサービスを提供するという意味では、ブランド・アイデンティティと似たような概念といえるかもしれないですね。

 

VI「ビジュアル・アイデンティティ」

ビジュアル・アイデンティティ(VI)は、MIをもとにしてコーポレートデザインを制定して様々なツールに取り入れることで、視覚的にブランドやサービスを認知して覚えてもらう戦略です。

会社のオフィシャルロゴやキャッチコピーだけでなく、コーポレートカラーやイメージキャラクターなど視覚的にブランドを想起させるものはすべてVIの対象といえます。

人間の情報収集において視覚からの情報は全体の約8割を占めるといわれており、VIはブランドやサービスを瞬時に認知してもらい他社の差別化を図るためにかかせません。

コーポレートデザインを統一したことが、ブランドイメージを強く定着させるきっかけとなる事例は数多くあります。

関西の大手私鉄会社「阪急電鉄」は所有している車体の塗装を全てマルーン色(茶色がかった濃い赤色)一色で統一していて、関西の方には「高級感のある阪急マルーン」として認知されています。

阪急マルーンは1910年の開業時から変わらずに導入されている伝統色ですが、錆を目立たなくするため全体を茶色で塗装された車体がどこの鉄道会社でも使われていたそうです。

戦後、塗装コストの関係からカラーデザインを大幅に変える企業が多くなる一方で阪急は伝統あるブランドイメージを守るため、今日までデザインを変えずに続けてきました。

木目調の内装や羊毛製のソファーなども相まって、阪急は「関西随一のブランド路線」としてのイメージを確立してきたのです。

 

「アイデンティティ」の制定は中身を刷新してから外見を整えよう

コーポレート・アイデンティティ(CI)は会社のブランドイメージを構築するために企業の「精神性」というべきマインド・アイデンティティ(MI)、企業の顧客への「振る舞い」ともいえるブランド・アイデンティティ(BI)、企業の「身なり」とも呼べるビジュアル・アイデンティティ(VI)をひとつなぎで制定する戦略です。

特にMIは会社としての存在意義や理念などがからんでおり、企業の製品やサービスを開発・運用するうえでも特に重要な要素だといえます。

パーパスやビジョンなどに基づいたMIを制定したら、そのMIの考えをBIやVIに応用させることで、一貫したコーポレートデザインの形成につながり、より確固としたブランドイメージを根付かせることができるでしょう。

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