全ての企業が遵守しないといけない「景品表示法」の基礎知識

全ての企業が遵守しないといけない「景品表示法」の基礎知識プロモーション

売上や人気を得ようと不当な表記を盛り込んだ包装や宣伝などを規制する「景品表示法」が昭和32年に施行されてから早60年以上。

しかし現在でもネットで調べてみると、健康食品や加工食品などのメーカーが景品表示法に触れるような表示を出していたといったニュースが頻繁に起きています。

少しでも魅力的に感じるように訴えかけようとして、知らず知らずのうちに法的にひっかかるような表現を用いてしまえば今の時代、すぐに炎上してしまうリスクも考えられます。

そこで今回は景品表示法について、まずはどのようなものが法的にアウトなのか概要を説明いたします。

景品表示法が制定されたそもそものきっかけ

景品表示法が制定された大きな要因の一つとして、制定の二年前に起こった「ニセ牛缶事件」が挙げられます。

ニセ牛缶事件とは1960年、横浜市に住む主婦が購入した牛肉のイラストが描かれた缶詰に牛肉ではなく当時安価だった鯨の肉が入っていたことが明らかになったという事件で、当時はこのような食料品に関する偽りのある表示が珍しくありませんでした。

当時は今とは違い人体に明らかに有害な食品添加物も少なくなかったため、食品に関する表記が、単純に消費者を欺くだけではなく健康被害をもたらすおそれがあるとして、その後表記に関する法的な規制を望む声も多くのぼりました。

こうした声を受け、顧客の購買意思を不当に誘導しないよう「景品表示法」が生まれました。

景品表示法には「このような表現を用いること」というような統一的な規則はなく、あくまでも消費者の一般的な認識感覚を基にして、誤解を招くおそれのある表記かどうか判断されます。

 

景品表示法の目的は不当な販売の規制

現在、景品表示法では主に「不当表示(商品やサービスの情報を偽って表記して利益を得ようとする行為)」と「不当景品(商品に対して明らかに過大な景品を提供する行為)」の2つの行為を禁止することで、消費者が正しく商品やサービスを選択して購入できる環境の実現を目指しています。

景品表示法が適用されるのは、テレビや新聞などの広告、商品のパッケージやラベル、店頭のポスターやチラシなどお店が消費者に向けて公開している全ての媒体です。

今回は2つの禁止されている行為のうち、不当表示にあたる表示について見ていきます。

 

不当表示の例①:「優良誤認表示」

優良誤認表示とは自社商品が実際よりもはるかに良いものという情報を表示して、顧客を欺いて商品購入などへと誘導させる行為です。

外国産の食材も使用している商品に「国産食品のみ使用」、来店した事実のない店舗に「有名俳優の〇〇氏が行きつけ」と表示する例などが挙げられます。

また嘘の情報で他店や他社製品よりも優れていると表示する行為もこれに該当します。

例えば他にも受賞した商品があるにも関わらず「業界唯一の〇〇賞を受賞した商品」と表示した場合などが挙げられます。

ただし「圧倒的な満足感」といった個人的な感覚に左右される表現や「本場・沖縄の味」といった具体的な比較や判断がしにくい表現は、客観的にどれだけ実物から誇張されているのかが分かりにくく優良誤認とはならないことも多いです。

 

優良誤認表示と不実証広告規制

優良誤認表示の疑いがある商品を手がけている企業に対して、消費者庁は表示内容を裏付ける具体的な証拠の提出を要求できます。

証拠として認められるのは、客観的な調査や実証に基づく資料あるいは第三者の論文や調査発表など表示内容の論拠となりうる信頼性の高い資料です。

このため社内で集めたアンケート結果など客観性の欠けるものは提出資料とはなりません。

証拠提出の要求が出てから15日以内に企業が証拠を出せない場合、景品表示法に違反している「不実証広告」だとみなされます。

表示の差し止めや再発防止策の実施などの措置命令や売上金額に応じた課徴金納付命令が出されるほか、悪質性の高いものに対しては措置命令を経ずに罰金が科されてしまいます。

 

不当表示の例②:「有利誤認表示」

有利誤認表示とは自社商品が実際よりもはるかにお得に感じるような情報を表示して、顧客を欺いて商品の契約などに誘導させる行為です。

例えば通常500円で売られてる商品を「セール期間中は500円で販売」とあたかも安く売っているように見せかけて表示する例が挙げられます。

また通常時は他社より割高にも関わらず特定の条件で安くなった場合の料金体系のみを表示させて自社が安いと印象付けさせた場合や、割引前の価格を実際よりも高く書くことで顧客にお得だと思わせた場合なども、有利誤認表示にあてはまります。

有利誤認表示は携帯電話など料金体系が複雑になりやすい商品や、家電製品など複数の購入チャネルを比較しながら買う商品の宣伝などで起こるケースが多いです。

 

不当表示の例③:「おとり広告」

おとり広告とは自社が取り扱っていない商品やサービスを広告などに表示して、顧客をだまして誘致する行為です。

近年、回転寿司チェーンが実際には販売されていないメニューを広告に掲載していた問題でおとり広告が話題になった事件があります。

このほかにも、不動産が物件や土地を販売する際におとり広告が使われるケースが多いといわれています。

すでに売却されている物件を売り出し中の空き家として宣伝するおとり広告は、景品表示法だけでなく宅建業法にも違反してしまいます。

 

不当表示の例④:「強調表示」

強調表示とは自社商品を宣伝する際に分かりやすい表現や目立つ表現を使って商品のいい所に目がいくようにした表示です。

強調表示そのものは不当表示ではありませんが、同時に商品のデメリットも合わせて明記してあげる必要があります。

代表的なものとしてはCMなどでよく見かける「※ 効果には個人差があります。」「※一部の店舗では取り扱っていません。」といった表示で、打消し表示とも呼ばれています。

ただし打消し表示と強調表示の内容が矛盾しており商品の効能が正しく認識できない場合、表現的に顧客が誤認してしまうような場合、打消し表示の文字が認識しづらい場合などは、打消し表示が機能されない不当表示とみなされる可能性があります。

 

特定の商品に関する表示を規制する公正競争規約

食料品や化粧品など商品の種類によっては、表示内容から誤解を招かないよう業界内で定められた「公正競争規約」という規約があります。

例えばジュース飲料の場合、果汁が含まれている割合によってパッケージに果物の画像を表示させることができるか変わってきます。

このような公正競争規約は、2020年6月の段階で65種の商品に対して施行されています。

 

嘘やごまかしのある広告表示は厳しく規制されている

事実に反する情報を提示して顧客を集めることは、景品表示法に抵触してしまう行為です。

現在ではSNSの発達などにより問題のある表示がひとたび発見されてしまえば、あっという間に日本中に知られてしまいます。

少しぐらいの誇張ならバレないだろうと考えるのは、後々大きな経済的・信頼的な損失につながりかねません。

いい面だけでなく悪い面も含めて正しい情報を誠実に分かりやすく伝えることが、商品を売る上では何より大事です。

景品表示法は、こうした姿勢を忘れずに保つためにも必要な規則と言えるでしょう。

 

タイトルとURLをコピーしました