同じ紙でもコピー用紙と写真集の紙ってどこか触った感じが違いますよね。
実は写真集などには特別に印刷の仕上がりが良くなるよう光沢をつけてつくられた「塗工紙」というものが使われています。
ただ塗工紙には細かく色んな種類に分かれており、印刷発注の際に「アート紙」や「マット調」という文字を見てもどれを選んだらいいか分からないという人もいるでしょう。
そこで今回は塗工紙がそもそもどんなもので、どのような種類に分かれているのかまとめてみました。
塗工紙は「光沢が出るよう加工された特別な紙」
塗工紙は滑らかさや美しさを際立たせるために紙の表面に特殊な塗料を塗布した紙です。
この塗料はカオリンと呼ばれる中国で磁器の原料に用いられる粘土質の鉱物や炭酸カルシウムなどからなる白さを出すための填料とそれを紙に付着させるためのバインダーとよばれる接着剤を混ぜて作られます。
また塗料の中に樹脂やポリエチレンなどの物質を添加させることなどで、塗工紙の撥水性や表面強度を強めることもできます。
写真集やカタログの紙って普通のコピー用紙と比べるとシミやしわができにくいですよね。これも塗工紙の特性なのです。
着色効果の高さも塗工紙の特徴
印刷して時間が経つとインキは硬化していきますが、一部のインキは毛細管現象により紙へと吸収されます。
服に色のついた液体がこぼれて染み込んだ際、染みの色は液体そのものの色より暗くなりますよね。
同じようにインキも紙に吸収されることで「色の沈み」が発生して、若干色が暗く出てしまうことがあります。
塗工紙は表面を塗料でコーティングしてあるため、紙にインキが染み込みにくくインキの発色が保たれやすいのです。
また紙の表面には目には見えないほどの細かな凹凸が無数にあり、光が当たると乱反射を起こします。
しかし塗料でコーティングされた状態だと紙の表面が滑らかになり、光が散乱せずに一つの角度で反射するため、光沢や色彩のコントラストがくっきり出るようになります。
使用する塗料の量による塗工紙の種類分け
塗工紙は塗布される塗料の量により、「アート紙」「コート紙」「微塗工紙」と種類に分かれています。
種類 | 枚数 | 価格 |
上質紙 | 250枚 | 3,026円 |
コート紙 | 250枚 | 3,140円 |
アート紙 | 125枚 | 3,250円 |
アート紙は上質紙やコート紙よりも塗料をふんだんに用いている分、半分ほどの枚数でも他より高い価格になっています。
この他にも後述するマット調やグロス調といった光沢加工の種類によっても、塗工紙の価格は変わってきます。
塗料の量による分類①:「アート紙」
アート紙は紙の表面1平方メートルあたり片面およそ20g、両面でおよそ40gの塗料が塗布された塗工紙です。
メーカーによっては「アートコート紙」などとも呼ばれており、用紙には上質紙(原料が化学パルプ100%の紙)が使われています。
塗料を多く用いることで光沢がはっきり出るため、写真や画像に高級感や鮮やかな印象を与えることができます。
このためアート紙は高価な商品のカタログや、美術書の表紙など印刷するものの美しさをなるべくリアルに表現させたいものに使われます。
しかし強い光が過度に当たると白飛びが起こりやすいため、ポスターや掲示板の張り紙といった屋外での利用には適していません。
塗料の量による分類②:「コート紙」
コート紙は紙の表面1平方メートルあたり片面10~15g、両面で20~30gの塗料が塗布された塗工紙です。
上質紙を用いた上質コート紙と中質紙(原料のうち化学パルプの割合が70%以上の紙)を用いた中質コート紙があり、塗工紙の種類では最もポピュラーな種類です。
アート紙に比べて使用する塗料が少ないため価格をおさえながら、ある程度の光沢や着色効果を出せるのがコート紙の特徴です。
上質コート紙は書籍や雑誌の表紙、カレンダー、パンフレットなどに使われており、中質コート紙は雑誌の表紙やカラーページなどに用いられています。
また紙の表面1平方メートルあたり両面で15gの塗料が塗布された塗工紙を「軽量コート紙」と呼び、こちらは雑誌の本文ページやカタログなどに用いられています。
塗料の量による分類③:「微塗工紙」
微塗工紙は紙の表面1平方メートルあたり両面20g以下の塗料が塗布された塗工紙で、主に中質紙を用いて製造されます。
コーティングによる厚みがあまり出ないため、アート紙やコート紙では難しい輪転機による大量印刷ができるのが微塗工紙の特徴です。
安価で購入できる点や光沢が出にくいことで紙面全体が見やすくなる点から、スーパーやレストランなどのチラシや雑誌の本文ページなど様々な形で活用されています。
塗料の量による分類④:「キャストコート紙」
キャストコート紙はアート紙やコート紙を円筒状のキャストドラムという機械に押し当てることで、鏡のようにより強い光沢性や滑らかさを持たせた塗工紙で、「ミラーコート紙」とも呼ばれます。
写真や画像がより美しく華やかに映ることから、美術書や写真集だけでなく商品のパッケージなどにも用いられます。
光沢の度合いによる塗工紙の種類分け
塗工紙はコーティング加工された後、表面の光沢度合いを調節するためにさらなる加工が施されます。
この加工による光沢の度合いにより、塗工紙は「グロス調」「マット調」「ダル調」の3種類に分けられます。
光沢度による分類①:「グロス調」
スーパーカレンダー加工(複数のローラーで熱と圧力を加えて滑らかさや光沢を出す加工)により光沢度をさらに強めた塗工紙で、「光沢紙」と呼ばれることもあります。
印刷面のつややかさが強調されて高級感が出せるため、写真などの美術印刷などに使われています。
ただし印刷方法によっては、印刷面のこすれなどによりインキが剥がれることもあります。
光沢度による分類②:「マット調」
「マット加工」とも呼ばれるつや消し加工(塗工した面に細かな凹凸をつける加工)により、光沢が出にくいようにした塗工紙です。
白飛びの発生がおさえられるため可読性を向上させられるほか、紙面に落ち着いた雰囲気を与えられる効果もあります。
フルカラーの辞書や教科書、絵本など挿絵のある書籍の用紙として用いられることが多いです。
光沢度による分類③:「ダル調」
ダル調はグロス調とマット調の中間に位置する塗工紙で、「マットグロス調」とも呼ばれています。
印刷した際に白紙の部分はマット調となってつや消しが施され、印刷部分はグロス調となるためしっかり光沢が出るようになっています。
ツヤ消しによる見やすさと光沢による美しさでうまくバランスが取れていることから、ダル調は細かな文字も鮮やかな画像も見せたいカレンダーや美術書などに使われています。
塗工紙は「塗料の量」と「光沢度合い」で種類が分かれる
発色効果や光沢性を強める目的などで特殊な塗料でコーティング加工した印刷用紙を塗工紙といい、塗料の量や加工後の光沢度によって様々な種類に分けられます。
表面に塗られた塗料の量によっては「アート紙」「コート紙」「微塗工紙」などの種類に分けることができ、塗料の量の多いものほど価格も高くなります。
一方、コーティング加工した後の加工処理により塗工紙のつやの出具合が調節され、「グロス調」「ダル調」「マット調」と区分されていきます。
塗工紙の種類によって用途が少しずつ異なってくるため、発注する際には用途や予算などを考慮して最適なものを選びましょう。