企業における「人材確保」と「社員エンゲージメント」は、企業の持続可能な成長や競争力を高めていく上で極めて重要な課題です。
これらの課題に頭を悩ませているご担当者も多いのではないでしょうか。
2025年の労働市場は、技術革新、経済や社会の課題など多角的な対応が重要なテーマとなりそうです。
本記事では、2025年の労働市場の動向や注目すべきトピックスについてまとめるとともに、そんな中でどのように人材確保を強化していくのか考察しています。
2025年の労働市場の動向
ここでは、2025年に注目すべき労働市場の動向やトピックスについてご紹介します。
少子高齢化の影響と人材不足
少子高齢化は今後もさらに進み、労働人口の減少は免れません。
特に日本では2025年には800万人の団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となり、労働人口の低下もより問題となります。
これにより、従業員の採用競争はますます激化していきます。
AIと自動化による雇用の変化
人工知能やロボット技術の進化により、単純作業やルーティンワークは自動化され機会に仕事を奪われていきます。
一方で、データサイエンスやエンジニアリング、サーバーセキュリティなど、テクノロジー関連の専門分野では新たな人材の確保が必要になってきます。
リモートワークの定着と働き方の多様化
パンデミックをきっかけに定着したリモートワークですが、2025年にはリモートワークを継続・推進する企業と、生産性の観点で廃止する企業がでてきます。
米IT大手アマゾン・コムも、2025年1月から全世界でリモートワークを廃止すると発表しています。[注1]
企業は、ワークライフバランスと生産性の観点での議論を余儀なくされることになります。
人材の多様性と包摂性
結婚や出産を機に退職する女性が減ったことで、女性の労働力参画が促進されています。
2024年に厚生労働省が行った調査では、働く母親の割合は77.8%とこれまでで最も高い数値となりました。
家庭や介護などの生活面や、性別や年齢、障がいといった様々な障壁を取り払い、誰もが能力を発揮できる社会の実現が求められます。
スキルミスマッチ問題の深刻化
多くの業界、職種でデジタルスキルが求められるようになり、また日々発展する技術を労働者は学び続け、スキルをアップデートしていかなければいけません。
そういったリカレント教育、リスキリングの場を企業側も提供し続ける必要があります。
政府も、リスキリングやリカレント教育を促進するため、教育訓練給付制度の拡充やリカレント教育推進事業など様々な政策を打ち出しています。
人材確保の課題と社員エンゲージメント向上の重要性
少子高齢化による労働人口の減少などから、企業は人材確保の課題に直面していることは前項でも触れました。
そういった労働市場から見た、人材確保の課題と、企業が取り組むべき施策を紹介します。
人材の争奪戦は激化している
労働人口が減少している中でも、単純作業やルーティンワークは自動化され、人手不足がテクノロジーによって解消する分野もありますが、ITやデジタルの分野ではスキルを持った優秀な人材は争奪戦が激しくなっています。
また、終身雇用の概念は薄れてきており、転職や起業、フリーランスといった働き方の柔軟な考え方も広まってきていることから、企業はますます人材の確保には苦戦を強いられるでしょう。
人材が確保できない企業で起こること
人材は企業の最も重要な資産です。優秀な人材を獲得、育成することが出来なければ、企業の発展や成長はありません。
多様な視点を持つ人材を確保することで、イノベーションの創出や生産性の向上、企業の成長に貢献します。
特に次世代のリーダーを獲得し、育てていくことが組織の持続可能性に非常に重要なのは言うまでもありません。
人材確保のために必要なこと
せっかく獲得した人材も、社員エンゲージメントを高めなければ人材の流出は避けられません。
米ギャラップ社が世界139か国で実施したアンケート結果では、日本は従業員エンゲージメントが132位と世界最低水準となっています。
人材獲得が難しい中で、人材の流出は何としても食い止めなければなりません。
また、社員エンゲージメントを高めることが企業のイメージアップや働きやすい環境となり、人材の獲得にもつながります。
そのため、人材確保には社員エンゲージメントの向上が不可欠と言えます。
人材確保のために、社員エンゲージメントを向上させる
そもそも社員エンゲージメントとは何か
社員エンゲージメントや従業員エンゲージメントという言葉をよく耳にしますが、意味を説明するのはなかなか難しいものです。
社員エンゲージメントとは、社員が会社のビジョンや理念に共感し、自発的に会社に共感したい!と思う気持ちを指します。
会社と社員の信頼やつながりの強さを表す言葉です。
社員エンゲージメントの3要素
社員エンゲージメントは、以下の3つの要素から構成されます。
理解度
ここで言う理解度とは、社員が会社の理念や目指すビジョンに共感し、会社と社員が同じ方向を向いている状態を指します。
企業のビジョンを、社員ひとりひとりが当事者意識を持って理解し、実行できる環境を整えるためには、会社側からの経営方針や理念のわかりやすい開示が求められます。
帰属意識
帰属意識とは、社員が企業という集団に属している自覚を表します。
組織の一員であるという自覚と、組織の中での仲間とのコミュニケーションが企業の成長に繋がります。
行動意欲
社員自らが主体的に行動する意欲を発露し、維持できる環境が社員エンゲージメントに重要な行動意欲の要素です。
自発的な行動を促すため、企業は社員のモチベーションを高めることが必要とされます。
社員エンゲージメントを高めるための方法4選
一貫した企業理念やビジョンをわかりやすく伝える
まずは企業の理念や方針、ビジョンを明確に社員に伝えることが重要です。
そのためには、インナーブランディングやパーパスの見直しから行う必要性がでてくる企業もあるはずです。
ビジョンをオフィス内に掲示したり、ブランドブックや社内報の活用も有効です。
企業は、理念やビジョンをわかりやすく、何度も繰り返し社員へ伝えていく必要があります。
社員同士のコミュニケーションの促進
社員同士のコミュニケーションを活性化させることで、帰属意識が高まります。
近年ではリモートワークといった新しい働き方の従業員が増えたことで、コミュニケーションが難しくなっています。
企業は、社員の「チーム感の欠如」「疎外感・孤独感」をコミュニケーションで解決していかなければなりません。
チャットや社内SNSといったコミュニケーションツールの導入や、レクリエーションイベントの企画、オフィスレイアウトの工夫によりフリーアドレス制やカフェスペースの導入などで効果が期待できます。
公平で納得感のある人事評価制度の導入
明確で公平な人事評価は、社員の行動意欲を高めるのに欠かせません。
自身の働きが会社に正当に評価され、役職や報酬として返ってこなければ、社員が会社へ貢献したいと思う気持ちはなくなってしまいます。
ワークライフバランスを重視した働き方への転換
社員が仕事だけではなく私生活も充実させられるようにワークライフバランスを整えることが企業には求められます。
働きやすい環境が、社員の帰属意識や行動意欲を向上させます。
そもそもワークライフバランスとは仕事と生活のバランスがとれた状態を意味します。
ワークライフバランス実現のため、様々な企業が取り組みを進めています。
フレックスタイム制やテレワーク制の導入など柔軟な働き方を実現させることや、福利厚生の充実、育児・介護休暇や時短勤務の導入などからワークライフバランス推進を進める企業が多いです。
社員エンゲージメントを高めて人材確保
2025年の労働市場は、少子高齢化やAI等テクノロジーの進化によりダイナミックな変化が予想されます。
このような変化に対応し、優秀な人材を確保するためには社員エンゲージメントの向上が不可欠です。
本記事も参考に、ぜひ社員エンゲージメントを考え、実践していただけますと幸いです。
・関連資料のリンク
[注1] 米アマゾン、リモートワーク廃止へ 来年1月に – BBCニュース