『デザイン経営』。
聞いたことはあるけれど「説明して」と言われたら困ってしまう…。
そんな人やデザイン経営について、これから理解を深め取り入れていきたい人向けに現役デザイナーたなへいがデザイン経営について解説します!
デザイン経営ってそもそもどんなものなの?
デザイン経営とは、デザインを経営の根幹に据えた経営手法のことです。
国内では2018年に経済産業省・特許庁が『「デザイン経営」宣⾔』として発表・定義しています。[注1]
この宣言では、「世界の有力企業が戦略の中心にデザインを据える一方、日本では経営者がデザインを経営手段と認識しておらず、グローバル競争環境での弱みとなっている…」とありますが、これは技術や機能の追求だけでは、もはや商品やサービス、企業の差別化が難しい時代に完全になってしまったことを意味しています。
一般的にデザインと言うと、商品・サービスの見た目を良くすることをイメージする人が多いと思いますが、本質的な意味でのデザインとは「課題抽出→仮設→検証→課題解決」の設計行為であり、それは幅広い分野に応用ができます。
経営においては、その企業だけのブランド価値の創造(企業ブランドに共感してくれるファンの獲得)、新たなイノベーションの創出が期待できます。
デザイン経営の成功事例では海外では「Apple」や「ダイソン」、国内では無印良品を運営する「良品計画」、「マツダ」あたりが有名ですね。
デザインへの投資がもたらす金銭的な効果
デザインへの投資効果として、British Design Councilはデザインに投資するとその4倍の利益を得られると発表しています。
また、Design Value Indexは、S&P500全体と⽐較して過去10年間で2.1倍成⻑したことを明らかにしています。
その他の調査を⾒ても、「デザイン経営」を⾏う会社は⾼い競争⼒を保っていることから、デザインへの投資が企業の成長において重要な位置付けであることがわかります。
デザイン経営をおこなう上で重要な2つの定義
「デザイン経営宣⾔」ではデザイン経営と呼ぶための必要条件として
- 経営チームにデザイン責任者がいること
- 事業戦略構築の最上流からデザインが関与すること
を挙げています。
デザイン責任者とは、製品・サービス・事業が顧客起点で考えられているかどうか、⼜はブランド形成に資するものであるかどうかを判断し、必要な業務プロセスの変更を具体的に構想するスキルを持つ者のことです。
その責任者がいた上で2番を実行していくこととなります。
定義には書かれていませんが、デザインをおこなう上で忘れてはならないのが、いつもその中心に「人」がいることです。
デザイン経営ではこの「人」とは顧客・エンドユーザーであり、人を中心に考えていないデザイン(経営)は見た目こそ成立してても、根本では大失敗であり自己満足、ただの押し売りでしかありません。
ここで有効なのが「デザイン経営とは?」で述べたデザインの本質的である「課題抽出→仮設→検証→課題解決の設計」です。
これにより企業とユーザーとの間隔てる問題を解決し、ユーザーの共感と理解に基づいたビジネスがおこなえます。
そして、これは普段から課題解決をデザインワークとしておこなっているデザイナーだからこそできることです。
デザイン経営は会社に新たな価値を生み出すきっかけになる
今回はデザイン経営についてざっと説明してみましたが、これは社内にデザイン部門がある企業ほど他社より有利なことであり、デザイン部門を資財として活かしきれていない企業・デザイン経営をまだ導入できていない企業にとっては新たな変革への可能性を秘めていると言えます。
それはやがて5年、10年、もっと先の未来を見据えて取り組むことで企業だけでなく、社会全体の価値創造につながることでしょう。
・関連資料のリンク
[注1]経済産業省・特許庁:「デザイン経営」宣言
[注2]Design council :Design delivers for business