マーケティングにとって、顧客が会社や商品にどんな気持ちを持っているのかは言うまでもなく重要なもの。
商品の認識が違えば、当然ながらどのように売るべきかプロモーションのやり方も大きく変わってきます。
そこで顧客を商品の利用状況ごとにいくつかの「ステージ」に分類して、より上のステージに進んでもらうために各ステージで別々のアプローチをかけることが大切です。
今回は「顧客のステージ」について、概要とそれぞれのステージにいる顧客の特徴やアプローチの方法について説明します。
「顧客のステージ」はCRMの実施にかかせない
顧客をステージごとに分類するのは、CRM(カスタマー・リレーション・マネジメントの略で「顧客関係管理」の意味)を実行するのに欠かせない要素だからです。
CRMは会社が顧客に対して商品を購入した後もアプローチをかけ続けることで、ブランドイメージや信用を高めてリピート購入や継続利用を促進するマーケティング手法です。
主な施策の例としては過去に購入したものに関連した商品のDMを送ったり、会員ポイントが失効しそうになった顧客にお知らせを送ったりといったことが挙げられます。
カタカナ用語なのでCRMは近年登場した考え方に見えそうですが、江戸時代にはすでに「大福帳」という顧客の取引データをまとめた帳簿が普及しており、得意先の顧客へのあいさつ回りなどに活用されていました。
従来は顧客の数が多くなればなるほどきめ細やかな顧客へのアプローチが難しくなるとされていましたが、マーケティングオートメーションの普及によりこうしたCRMもより簡単に実施しやすくなりました。
このCRMを実施するには、どの顧客が今どう商品を利用しているか細かく把握しておく必要があり、そのために「顧客のステージ」という概念が重要になるのです。
「顧客のステージ」で利益の安定化をねらう
企業が安定した利益を得るためには、リピーターを多く確保しておくことが大事です。
パレートの法則にも「売上の8割は顧客の2割であるリピーターがもたらしている」という言葉がある通り、今いるリピーターの維持は新規顧客の開拓よりも利益につながりやすいといえます。
実際にマッキンゼーによる2001年のある調査結果によると、アメリカのSaaS企業の中でもリピーター客の維持を重視しているところは、新規顧客の開拓を重視するところよりも平均成長率が高いことがわかっています。
リピーターが十分にいる企業なら彼らのステージを維持すればいいのですが、そうでない場合は今いる顧客をリピーターにしていかないといけません。
またその新規顧客自体がまだそれほどいない場合、まずはリードとも呼ばれる見込み客にしっかりアプローチして商品やサービスを買ってもらうところから始める必要があります。
こうして見込み客を最終的にリピーターにしていく中で、顧客はいくつかのステージを移動していくのです。
「顧客のステージ」の5つのステージとは
顧客のステージは大まかに以下の5つの種類に分けることができて、CRMの活動でより上のステージに移したり今のステージに留めたりすることを目指します。
- 見込み客
- 新規顧客
- 優良顧客
- 休眠顧客
- 離脱顧客
この5つのステージについて、特徴やアプローチの仕方を見ていきましょう。
ステージ1 「見込み客」
見込み客は商品やサービスを認知はしているが、購入や利用までには至っていない状態の「将来の顧客」を指しています。
広告や口コミなどにより存在を知っていてある程度の関心があることから、アプローチできれば新規顧客となってくれる可能性が高いのが特徴です。
商品やサービスへの関心を高めて購入や利用につなげるためには、試供品や関連資料を無料で提供するなど実際の効能に共感してもらえるよう、LPやダイレクトメールなどのコンテンツを整備していくのが鉄則です。
ただし商品やサービスを利用してもらいたいペルソナ像をしっかり固めておかないと、せっかくアプローチしても相手のニーズに刺さりにくくなってしまうので注意しましょう。
ステージ2 「新規顧客」
新規顧客は1度でも商品を購入したりサービスを利用したりしたことのある状態の「太客になり得る顧客」を指しています。
まだ商品やサービスへの固定的なブランドイメージを持っていないため、ブランドへの信頼や好感を高めるアプローチが重要となります。
同じような商品やサービスが他社からも多く出ている場合、新規顧客は競合製品と比較しながら最終的に利用し続けるものを検討している可能性が高いため、他社に顧客を奪われないよう業界内のリサーチをより重点的に行いましょう。
メールやSMSなどで関連商品の紹介や限定特典の案内を提供して定期的にアプローチをかけることがスタンダードな手段ですが、一方的に送りまくって相手にしつこく思われないよう注意しましょう。
ステージ3 「継続顧客」
継続顧客は頻繁に商品を購入してくれたりサービスを継続的に利用してくれたりしている状態の「リピーター客」を指します。
商品やサービスへの愛着が強いため何もしなくても今後も購入したり利用したりしてもらえる一方、さらなるアプローチで会社から大事な顧客として認められているという特別感を与えることで、継続顧客のロイヤルティをさらに強めてより長期的な利益の安定につなげられます。
継続顧客には会社にとって重要な存在であることを実感してもらえるよう、新しい商品を先行販売したり無料の限定グッズを提供したりといったアプローチを行って信頼関係をつなぎとめる施策が効果的です。
他にも会員用ポータルサイトの運営などで顧客同士のコミュニケーションを促進させるやり方もあげられます。
ステージ4 「休眠顧客」
休眠顧客は最後に商品の購入やサービスの利用をしてから一定期間が空いている状態の「最近見かけなくなった客」を指しています。
購入や利用を控えている理由は顧客によって異なってくるため、理由に対するヒアリングをしっかり行って商品やサービスの問題点を改善することが必要です。
一定期間利用のない顧客に対してアンケートを取るなどしてユーザーの声を聞くのが効果的ですが、その際には協力した方に特典やクーポンを提供するといったお礼も添えればより多くの意見を集められるでしょう。
また休眠顧客の場合はヒアリングやアプローチを行うタイミングも気を付けないといけません。
購入してすぐの時点では顧客の不満が集まりにくく、反対に遅すぎると離脱顧客になる可能性があります。
ステージ5 「離脱顧客」
離脱顧客は最後の商品購入やサービス利用から長期間アクションが見られない状態の「もう関係が途切れそうな客」を指しています。
休眠顧客との線引きは商品やサービスによっても異なりますが、最後に利用してから3ヶ月以上経っている顧客を離脱顧客とすることが多いです。
顧客の離脱は商品やサービスに対して不満やデメリットを顧客が感じたことの現れといえ、何も対応しないままでいるとさらなる休眠顧客や離脱顧客の発生につながってしまいます。
こうした状況を防ぐためには、離脱しそうな顧客が自主的にまた利用してくれるよう、「今まで利用してきたポイントが離脱で無効になる」といった離脱によるリスクなどもまじえながらアプローチすることが有効です。
まずは「どのステップ」の顧客にプロモーションをかけるか検討しよう
「顧客のステージ」は顧客と会社の関係を管理するCRMの考えに深く結びついた考え方です。
商品やサービスをどのくらい利用するか、どれくらい関心を持っているかによって、顧客のステージは大きく5つに分かれています。
見込み客、新規顧客などのステージごとに、ターゲットの特徴やニーズも少しずつ変わってきます。
それぞれのステージにあわせたアプローチをおこなう前に、まずは自分の会社や団体にどんな利用者がいるのかしっかり分析したのち、それぞれのフェーズにあったアプローチ方法を試してみてください。