東洋美術印刷株式会社では「実利用者ユニバーサルデザイン」認証を用いた生命保険の情報デザイン改善を行っています。
「実利用者ユニバーサルデザイン」認証による改善は情報デザインの依頼主と制作会社が共同で行うこともあり、我々制作会社はユーザーにとっての見やすさと依頼主が伝えたいことのどちらも満たすよう改善しないとなりません。
今回はユニバーサルデザインコーディネーターの資格取得者に、実際にデザイン改善したときの様子を中心に話をうかがってみました。
利用者と一緒につくるユニバーサルデザイン
特定非営利活動法人 実利用者研究機構(通称:ジツケン)が制定する「実利用者ユニバーサルデザイン」認証は、ペルソナとなるユーザーのテストを通じて改善された製品デザインに与えられる認証制度です。
自社の製品やサービスに「実利用者ユニバーサルデザイン」認証のもとデザインを改善するには、実利用者研究機構が定める「ユニバーサルデザインコーディネーター認定資格制度」で資格を取得したコーディネーターの指導が必要です。
ユニバーサルデザインコーディネーターに聞いてみました!
弊社では生命保険のパンフレットや申込書類の製作を手がけていますが、過去に某保険会社が販売している米国ドル建て生命保険商品のパンフレットにユニバーサルデザインを取り入れて改善した事例があります。
今回は実際にデザイン改善に携わったスタッフにインタビューいたしました。
コーディネーターになるための勉強はしましたか?
はい。半年ほどかけて事故につながるエラーの対策などを勉強してきました。
例えば自動車の場合は、よくアクセルとブレーキを踏み間違える事故ってありますよね。
あれを防ぐためにどうすればいいかといったことを想定して理屈や対策を考えてきました。
実際の製品テストはどのような感じで行われましたか?
テストには社外から5人のユーザーが集められます。
基本性別や年齢などはバラバラですが、場合によってはペルソナに合わせて特定の属性のユーザーを集めてもらうこともあります。
私たちはクライアントとなる保険会社の方と一緒に別室でテストの様子を見守ります。
ユーザーの意見だけでなく視線や表情なども見られるので、デザイン改善の参考にしています。
5人もユーザーがいたら異なる感想が出てくることもありませんか?
そういうこともあります。
ですのでクライアントには出てきた問題点ごとに優先順位をつけてもらって、意見が合致した優先度の高い問題点から取り組んでいます。
それでも意見は割れやすいので決定に何日間もかかることもありますよ。
テストしてもらった後はどうするんですか?
実際に出てきた問題点をもとにクライアントと一緒にデザインを改善していきます。
今回は保険料を払う期間を表紙に大きく表示させたり、ドル建てならではのメリットを分かりやすく表記したり、商品の特徴が多すぎるとかえってイメージしづらくなるため項目を8つから3つに減らしたり、Q&Aをもっと初心者にあわせた内容にしたりなど色んなところを修正しました
その後、修正したパンフレットを再度提出し、問題点が全部改善されたら認証を得られるという流れです。
最終的にゴーサインが出るようになるまでだいたい半年ほどはかかりますね。
デザインの改善といえば似たような制度にUCD※がありますよね。
そちらとの違いは何ですか?
UCDは基本として「わかりやすさの基準」に基づいており、対象案件が基準とどれだけの差異が発生しているか確認し、基準に届いていない点を改善します。
一方、「実利用者ユニバーサルデザイン」認証は実際の利用者になりうる第三者に対象案件を利用してもらい、そのなかで見えてくる問題点を改善します。
UCDにもユーザーテストにより問題点を発見するソリューションがあるので双方よく似ていますが、研究を重ねて策定した「わかりやすさの基準」を重視するか、基準を用いずユーザーテストを重視するかの違いと言えるでしょうか。
なるほど、似ているようでも重視する点が微妙に違うんですね。
ユーザーテストの具体的なお話をお聞かせいただきありがとうございました!
リアルなユーザーの声からユニバーサルデザインが生まれている
「実利用者ユニバーサルデザイン認証」によりユーザーの声を生かしたデザイン改善ができるということが、インタビューを通じて改めて実感いたしました。
実利用者研究機構では他にも「使いやすさ検証済認証制度」などユーザー目線で使いやすさを審査する制度があり、多くの製品やサービスが制度を活用しています。
今回紹介した保険商品も詳しくないユーザーにとっては正直中身が頭に入りにくいもの。
少しでも中身が伝わるようにわかりやすい情報デザインに改善するのはとても重要です。
今後も弊社が手がけた事例について紹介していきます。
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