デザイン制作業務を外部委託する際、あがってくるデザインの良し悪しは皆さんどうやって判断していますか。
資料や原稿で指示したとおり情報が掲載されているか、目的を理解してデザインコンセプトが設計されているか、このような基本的な要件を満たしているかどうかまではチェックをしていることと思います。
しかし、なんとなく納得がいかなくてデザインが気に入らなかったり、センスが悪いので修正してほしいと感じることは良くあるのではないでしょうか。
いざ修正を入れようとすると具体的にどこがどう良くないのか、良くないと言える根拠がどこにあるのか、自分でもわからなくなってしまい納得のいく説明をデザイン制作者に対してできないことがあると思います。
そこで今回はデザインの良し悪しをどのように評価し、指摘をすればいいのか考えてみたいと思います。
「伝わりやすさ」でデザインの良し悪しを見てみる
良いデザインの定義は状況やコンテキストにより変わります。
認知を目的としたデザインや、製品を魅力的に魅せるためのデザイン、製品の利用法を示すマニュアルのデザインなど、求められる「良いデザイン」の定義は千差万別に変化します。
そこで今回は様々な目的のデザインがある中で、「情報を正しく伝えること」を目的とした情報デザインにおいて、良いデザインとは何か考えてみます。
一度に沢山の情報を伝えようとして文字量が過多になったり、誤読により情報の誤認を招きかねないレイアウトになってたり、そうした見る人のことを十分に配慮できていないデザインはいまだにいたるところで見受けられます。
また文字が小さすぎたり色弱者に識別しにくい色彩設定になっていたりと、ユニバーサルな観点で様々な見え方、見られ方があることを理解しておいた方が良いでしょう。
良いデザインをつくる上での7つのポイント
良い情報デザインをつくるには何が重要か、いくつかポイントをまとめてみました。
ポイント① 明確さとシンプルさ
情報デザインは、情報を明確に伝えることができるようにシンプルでわかりやすい形で表現されるべきです。無駄な装飾や複雑な要素が排除され、必要な情報だけが強調されます。
また、説明したいことが多過ぎて、誌面に対してついつい情報を盛り込みすぎてしまうこともありますが、情報の量が多くなればなるほど誌面から圧迫感を感じさせてしまい、見るのも拒否したくなるような苦痛なデザインとなってしまいます。
ポイント② 視覚的な優先順位
情報が均一に羅列されたデザインはメリハリに欠け、情報理解が困難となります。
情報の重要性が見た目で理解できるよう、大きさや色の強調、イメージの挿入などで視覚的なヒエラルキーを確立しましょう。
見出しと本文の差別化、重要な訴求ポイントの強調、また、ユーザーにとって重要なリスクとなる情報も見た目を強調することが大事です。
これにより、重要な情報が際立ち、読者がすばやく理解できるようになります。
ポイント③ デザインの一貫性
デザイン要素やスタイルが一貫していることが重要です。
一貫性があることで、情報が整然と配置され、読者が混乱することなく情報を消化できます。
複数ページある書籍等のデザインにおいて、各ページがバラバラにデザインされていると情報を理解することは相当困難となります。
どのページを開いても同じ位置にタイトルがあり、同じ意味性の要素に同じ配色がされているなど、一貫性、統一性があることで理解は促進されます。
ポイント④ 色彩設計とコントラスト
視認性を高めるためには色の相関関係やコントラストについて理解を深めておく必要があります。
「色相環(しきそうかん)」という色の関係性を環状に配したモデルに従って、目立つように補い合う色の関係を理解してデザインされていると視認性において効果的です。
あわせてコントラストも意識しておく必要があります。濃い背景色の上に薄い文字を載せてしまうと文字の視認性が悪く読みにくくなります。
また、日本人男性の20人に1人は色弱者ですので、色弱者でも識別できる色設定がされているかということも留意が必要です。
ポイント⑤ フォントのサイズと形状
フォントの選択は読みやすさや視認性に大きく影響します。
目立たせたい見出しに使用するフォント、長文でも目にやさしい本文用のフォントなど、適切なフォントが選ばれている必要があります。
フォントメーカーは小さい注意書きでも読みやすい文字や、高齢者でも読みやすい文字など、様々な状況に応じて読みやすさを追求したユニバーサルデザインフォントを販売しているので、それらを使用してみるのも良いでしょう。
また、文字サイズや行間などといったテキストデザインは十分な読みやすさが感じられるよう、ゆとりを持たせることも重要です。
ポイント⑥ 図表の適切な配置
統計などの情報を分かりやすく伝えるためにはテキストで説明するよりもグラフやチャートで表現すると効果的です。
テキストだけだと平坦な表現となる個所に、アイコンなどの象徴を挿入することでイメージが想起しやすくなる効果があります。
ただし、これらの図表が適切に配置されていないと誤った方向にイメージが誘導されてしまったり、要素が多すぎることで導線が複雑になり理解が妨げられたりすることもあるので、使用には注意が必要です。
ポイント⑦ 情報へのアクセス性
ターゲットとするユーザーに情報が届かなければデザインは意味を失ってしまいます。
ユーザーが情報に容易にアクセスできるかはとても重要な要素となります。
WEB媒体にするか紙媒体にするかなど、年代に応じた情報のアクセシビリティが確保されているかが検討されている必要があります。
また、情報に接することができたときには、その誌面や画面を見たときに、ユーザーが知りたいことがどこに書かれているのか一目で分かるデザインになっていることもポイントです。
情報デザインを評価する4つの主な方法
良い情報デザインを実現するには上記の点を意識することが必要不可欠です。
できあがった情報デザインの良し悪しをどのように評価すればよいのか、いくつか方法があるので紹介します。
ユーザーテスト
ユーザーに情報デザインを試しに見て、体験してもらい直接意見を聞くことで、予想できなかった気づきも含めてリアルな評価をもらうことができます。
改善の必要性が分かり、UX(顧客体験)を含めたデザインの向上が期待できます。
ペルソナとなる年代や性別の方はもちろん、様々な属性のユーザーにためしてもらうことによって、どんな人にも情報が等しく伝わる理想的なデザインへと近づけられるでしょう。
専門家のレビュー
情報デザインの専門家やデザイナーにデザインをレビューしてもらうことで、問題点や改善の提案を受け取ることができます。
経験から補足すべきデザインの知見を備えた専門家の意見は、デザインの品質を向上させるための貴重なフィードバックとなります。
アクセシビリティ確認
視覚や色覚に関係なく情報のアクセシビリティが保たれているか、様々なハンディキャップによる見え方の違いをシミュレートしながら確認していきます。
視覚異常の方は原稿や画像がどう見えているのかチェックできるソフトやアプリも多数出回っています。
チェックした結果をもとに、人によっては判別しにくい色の組み合わせで情報伝達を妨げないよう色彩設計を改善させることができます。
他社の製品との比較
他社が同じような情報デザインを手がけている場合、自社のものと比較してどう違うのか調べてみるのも手です。
ただし情報デザインの問題点を修正しようとして、無意識に他社のもののデザインを似せてしまわないように注意しましょう。
手早く情報デザインをチェックする3つの方法
情報デザインの問題点がないか気になるものの本格的に調べる余裕がない場合、以下の方法で手早くチェックするのも一つの手です。
5秒ルール
上がってきたデザインを見て5秒間だけ眺め、その間に最も目を引く部分や重要な情報がすぐに理解できるかどうかを評価します。
予算を掛けて客観的な評価を行うのが難しい場合、主観であってもあれこれ考えず直感に頼ってデザインをチェックするのも一つの手です。
もし最初の5秒で伝えたい情報がわかりにくい場合、改善の余地があるかもしれません。
フィードバックの収集
自分以外の身近な人をテスターとして意見を収集する方法も有効です。
複数の人からフィードバックを集めるのが良いでしょう。
異なる視点や意見を聞くことで、客観的な評価が得られます。特に、ターゲットに近い属性のメンバーのフィードバックは貴重です。
アイトラッキング
文章を読むときに視線がどのように動いているか、テスターの方に読んでいるところを指さしてもらうなどの方法で調べます。
一通り読み終わるまでの時間も計測できれば、スムーズに読めているか、読んでいてストレスに感じるところはないか確認できるでしょう。
情報デザインは「ユーザーファースト」を徹底させよう
情報デザインは何よりも情報の伝わりやすさや見やすさが大切です。
良い情報デザインをつくるうえでは情報の明確性など7つのポイントをおさえておきましょう。
できあがった情報デザインを診断する方法としては、ユーザーテストや専門機関によるチェックなどがあります。
いずれにしろより多くの人に分かりやすいデザインを実現させるためには、ユーザーの立場にたってみて見やすさや伝わりやすさは何か考えながらつくっていく姿勢が重要なんですね。
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